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栃木リンチ殺人事件の真実――とんでもない控訴審判決を検証する

控訴審・東京高等裁判所判決の要点

*2007年3月28日、東京高等裁判所・富越和厚裁判長が示した判決の要点を抜粋した。
*原告は、被害者の父親・須藤光男さんと母親・洋子さんの2名だったが、裁判の途中で洋子さんが急逝されたため、そのあとを娘さんが継承している。
*[  ]内は編集部による注。

■争点1:主犯の両親に対する監督義務違反

・須藤光男さんらによる控訴。一審で認められなかった主犯A(事件当時19歳)の保護監督義務違反を問う賠償請求

・判決 → 棄却

・裁判所の判断

「加害者[A]に対する請求のほかに、本件事件に対するその両親の監督責任を法的に問うことまではできないと判断した」

・判断理由

「Aの年齢[当時19歳]等において、就職への指導、違法な行為をしないようにとの一般的な注意、外出先や交友関係の確認、遊興費の入手経緯や使途の確認等といった一般的な監督義務を尽くしても、その効果を期待しがたい状況になっていたものということができる。また、被控訴人[Aの両親]において、本件事件の発生を具体的に予見し又は認識し得たと認めるべき証拠はないから、上記予見、認識に基づき、本件事件の発生を防止又は中止させるための具体的な監督義務があったということもできない」

*編集部注:犯人たちの親に対する「保護監督義務違反」は、BとCの親が責任を認め和解が成立しているが、主犯格Aの両親は認めず判決に持ち込まれ、結果、棄却となった。

■争点2:栃木県警の対応の違法性(国家賠償法に基づく)

・栃木県による控訴。一審が国賠法に基づく栃木県警警察官の違法性を認め約9600万円の賠償支払いを命じたことに対するもの。

・判決 → 損害賠償金額を1100万円とする(一審判決の約9分の1に減額された)。

・裁判所の判断

「控訴人栃木県における警察権の行使の違法については、栃木県警察官に過失があったと認めることはできるものの、当該過失と正和の死亡を回避できなかったこととの間の相当因果関係を認めるには足りず、正和の死亡を回避し得た可能性を侵害された限度において損害を認めることができるものと判断した」

・判断理由

・警察が殺害を阻止できた可能性は「3割」しかない

「11月26日(*)以降……即応した捜査が行われていれば、殺害前に正和を発見し得た可能性も3割程度はあったものと認めることが相当であり……上記過失(警察官が即応しなかったこと)がなかったとしても、正和の殺害を阻止し得たとは認められないが、正和の殺害を阻止することにつき3割程度の可能性はあったというべきである」

*編集部注:24日に足利銀行東京支店に被害者らが現れ、行員が異状に気づいて栃木の支店を通じて正和両親に連絡。その様子が防犯ビデオに撮られており、25日に正和両親はこれを証拠として録画テープを取り寄せるよう警察に訴えたが、これも無視された。

・両親は「切迫した認識」を伝えていなかった

「正和両親らが……栃木県警警察官に対して表示された働きかけは……正和の捜索を開始するよう求めるものであって、正和が生命に危険が及ぶような犯罪の被害者となっているとの切迫した認識を告げて救済を求めたものということはできず、栃木県警警察官においても……切迫した認識を有するに至らなかったものといえる」

・携帯で警察を名乗ったことと殺害との「関連なし」

「また、11月30日にI主任[石橋警察署担当警察官]が正和からの電話に警察官を名乗った……発言が、正和殺害を決断させたと認めるには足りない」

・警察と加害者とは共同行為ではなかったから「慰謝料減額」

「栃木県警警察官の過失は、加害者らの行為を共同したものではなく、加害者の犯罪を阻止しえなかったことに向けられたものであり、加害の様態について責任を負う関係にはなく……したがって、控訴人栃木県との関係においては、正和の慰謝料は、2000万円と認めることが相当である[原判決より大幅の減額]」

・被害者本人に「過失」があり「過失相殺」する

「正和本人に非難されるべき点はないが、控訴人栃木県に対する正和の請求権として考慮する限り、正和の上記行動[加害者と行動をともにした、勤務先や両親にうそをついたりした等]が、栃木県警警察官に対して、被害者であることを認識することの妨げとなり、正和を素行不良グループの一員であることを認識させる原因となったものであり、損害の分担という観点からは、控訴人栃木県において全額を負担すべきものではなく、民法722条2項(*)を類推し、控訴人栃木県が負担すべき範囲は5割をもって相当と解される」

*編集部注:民法722条2項 被害者に過失ありたるときは裁判所は損害賠償の額を定むるに付き之を斟酌することを得