「加害者[A]に対する請求のほかに、本件事件に対するその両親の監督責任を法的に問うことまではできないと判断した」
「Aの年齢[当時19歳]等において、就職への指導、違法な行為をしないようにとの一般的な注意、外出先や交友関係の確認、遊興費の入手経緯や使途の確認等といった一般的な監督義務を尽くしても、その効果を期待しがたい状況になっていたものということができる。また、被控訴人[Aの両親]において、本件事件の発生を具体的に予見し又は認識し得たと認めるべき証拠はないから、上記予見、認識に基づき、本件事件の発生を防止又は中止させるための具体的な監督義務があったということもできない」
「控訴人栃木県における警察権の行使の違法については、栃木県警察官に過失があったと認めることはできるものの、当該過失と正和の死亡を回避できなかったこととの間の相当因果関係を認めるには足りず、正和の死亡を回避し得た可能性を侵害された限度において損害を認めることができるものと判断した」
「11月26日(*)以降……即応した捜査が行われていれば、殺害前に正和を発見し得た可能性も3割程度はあったものと認めることが相当であり……上記過失(警察官が即応しなかったこと)がなかったとしても、正和の殺害を阻止し得たとは認められないが、正和の殺害を阻止することにつき3割程度の可能性はあったというべきである」
「正和両親らが……栃木県警警察官に対して表示された働きかけは……正和の捜索を開始するよう求めるものであって、正和が生命に危険が及ぶような犯罪の被害者となっているとの切迫した認識を告げて救済を求めたものということはできず、栃木県警警察官においても……切迫した認識を有するに至らなかったものといえる」
「また、11月30日にI主任[石橋警察署担当警察官]が正和からの電話に警察官を名乗った……発言が、正和殺害を決断させたと認めるには足りない」
「栃木県警警察官の過失は、加害者らの行為を共同したものではなく、加害者の犯罪を阻止しえなかったことに向けられたものであり、加害の様態について責任を負う関係にはなく……したがって、控訴人栃木県との関係においては、正和の慰謝料は、2000万円と認めることが相当である[原判決より大幅の減額]」
「正和本人に非難されるべき点はないが、控訴人栃木県に対する正和の請求権として考慮する限り、正和の上記行動[加害者と行動をともにした、勤務先や両親にうそをついたりした等]が、栃木県警警察官に対して、被害者であることを認識することの妨げとなり、正和を素行不良グループの一員であることを認識させる原因となったものであり、損害の分担という観点からは、控訴人栃木県において全額を負担すべきものではなく、民法722条2項(*)を類推し、控訴人栃木県が負担すべき範囲は5割をもって相当と解される」