www.soshisha.com
このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote

「こんなこともできないんなら、もう会社に来るな」

 会社内で、このような言い方をするといまやパワハラ、ブラック企業ということで問題になります。これをパワハラにならないように言い換えてください、という問題が本書(『バカに見られないための日本語トレーニング』樋口裕一著)、134ページにあります。解答の一例として、
 「しっかり仕事をして君の地位を安定させてください」
 という言い方が示され、「プラスの面を強調せよ」などと説明されています。この通りに言うのかはともかく一つのヒントになります。いずれにしろ、最近、このようなパワハラやセクハラに気を付けるようにという社会風潮が強まっています。またネット上では政治的公正(ポリティカル・コレクトネス)な言い回しをしないとすぐ叩かれたり、いわゆる炎上騒ぎになることもしばしばです。つまり、以前よりメールや会話の言い回しに気を付けなければならない社会になっているのです。ところが一方では「死ね」とか「ブス」とかの若者たちの乱暴で短絡的言葉も相変わらず大はやりです。ネット社会の進展とともに語彙力も衰退しつつあるようです。
 本書はこうした社会に対応するためにもっと言葉の力を鍛えようという考えから作られた日本語問題集です。

 例えば、次のような問題があります。

「スーパーで買ったブドウが中のほうが腐っていた、どうやって苦情を伝えるか」(57ページ)
「上司のお別れの会に娘のピアノ発表会で行けない、失礼にならないようにどう断るか」(233ページ)
「『今日は私がご馳走するよ何がいい』と目上の人に言われて『牛丼でいいです』と答えた。この答え方に間違いがあるか。もっと印象が良くなるように言い換えよ」(145ページ)

 など、本書には語彙を豊かにし、言い回しを学ぶ200問以上の問題が掲載されています。
 著者の樋口裕一氏は高校・大学生のための小論文指導の第一人者であり、ベストセラーとなった『頭がいい人悪い人の会話術(PHP新書)など文章や会話の本を多数著わしています。いま社会人としてはこのようなノウハウが最も必要とされているのではないでしょうか。

 では最後にもう一つ。

「あなたのでっかいおっぱいにそそられる」この文をセクハラにならないように書き換えよ。
 こんな無茶な問題もあります。
 解答は本書135ページに。

(担当/木谷)

樋口裕一(ひぐち・ゆういち)

1951年、大分県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院博士課程満期退学。小論文指導の第一人者。小論文の通信添削塾「白藍塾」塾長。多摩大学教授。著書にベストセラーとなった『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)『人の心を動かす文章術』(草思社)などがある。

この本のページ 草思社ブログもご覧ください

この本を購入する