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1ランクアップのための 俳句特訓塾

 俳句上達はなかなかに難しい。上達の要諦を述べた本は古今あまたあり、この本の著者ひらのこぼ氏の以前の書『俳句開眼100の名言』(草思社)では、100冊以上もあるその一部を紹介している。また、言語芸術であるだけにその極意は、抽象的、精神論的になりがちである。「見たままを詠め」と言われても、凡人にはにわかにはわかりにくい。

 その上達法に風穴を開けたのがひらのこぼ氏の出世作『俳句がうまくなる100の発想法』(草思社文庫)である。これは「裏側を詠んでみる」(羽子板や裏絵さびしき夜の梅――荷風)とか「名前を付けてみる」(吉良常と名づけし鶏は孤独らし――穴井太)とか、名句を発想の型に分類して、すぐに活用できるようにした本で、その臆面のない分類にかえって洒落気を感じたものである。

 ひらのこぼ氏は元コピーライターでまた、理数系の大学を出ていることもあり、妙に合理的であり、理論的にアプローチをするところが面白い。

 今回の本でも、2章、3章の無理やりにでも俳句を作ってしまえとでもいうべき、集中トレーニングの設定が大変ユニークである。

「毎日、動物園に通って動物の顔を見て一句」、
象も耳立てて聞くかや秋の風――永井荷風)、
また、「毎日誰かの忌日だったり、記念日だったりするので、それをお題に一句」、例えば1月1日は鉄腕アトムの日ということなので、
年新た無敵の空がありにけり――こぼ)
「好きな俳人と10番勝負してみよう」、というところでは、例えば正岡子規とでは、
秋風や伊予ヘ流るる汐の音――子規)
向こう面張りて野分の過ぎゆけり――こぼ)
などとやってみる。

 ほかにも〈俳筋力〉アップのトレーニング法をいくつか紹介しているが、大真面目にならず、俳諧的センスの本質に適ったノウハウであるところが、本書の良い点である。

(担当/木谷)

ひらのこぼ

昭和23年、京都生まれ。大阪大学工学部卒業。汽船会社設計部を経て、昭和48年広告会社へコピーライターとして入社。奈良市在住。平成10年、銀化(中原道夫主宰)に入会。現在、銀化同人。著書に『俳句がうまくなる100の発想法』『俳句がどんどん湧いてくる100の発想法』などの俳句発想法シリーズのほか、『俳句発想法歳時記』春・夏・秋・冬+新年各篇(以上、草思社文庫)などがある。

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