www.soshisha.com
このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote

スイカのタネはなぜ散らばっているのか

 著者の稲垣氏は、過去に草思社で「身近な雑草のゆかいな生き方」(2003)、「身近な野菜のなるほど観察記」(2005)、「蝶々はなぜ菜の葉にとまるのか」(2006)を刊行し、近年も、「弱者の戦略」(2014、新潮選書)、「たたかう植物」(ちくま新書、2015)など、植物や動物を時に擬人化したユニークなエッセイを多数刊行してきました。その稲垣氏が植物の「タネ」にしぼって、その不思議に迫ったのが本書です。

 昨今、「ウニはすごい、バッタもすごい デザインの生物学」「ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ」など、生きもの本が人気ですが、本書もそうした“生命の不思議本”として読んでいただける本です。

 植物の生き残り戦略とは、つまるところ、「タネをいかに拡散するか」です。植物は移動できませんが、タネは移動できます。タネたちの「移動」への執念と知恵には、驚くばかりです。  たとえば、オオバコのタネは靴の裏や車のタイヤにくっついて移動し、テッポウウリは時速200劼發梁度で実からタネを長距離噴射、キク科の雑草のタネは綿毛を利用してスカイツリーより空高く飛行し、カエデのタネは2枚のプロペラで回転移動、スミレのタネは栄養豊富なゼリーを餌にしてアリに運ばせます。いったいどうやって、そのような移動の知恵を身につけたのでしょう。

 このほか、「柿のタネは丸いのに、なぜお菓子の柿の種は細長い?」「イチゴの表面のつぶつぶは、タネじゃなくて実!」「梅干しのタネもサクランボのタネも、じつはタネじゃない!」「ヒマワリのタネは、なぜ白と黒のシマ模様なのか?」などの、タネトリビアも満載です。

 ところで、本書のタイトルにもなっているスイカですが、なぜタネが実の中で散らばっているのでしょう。メロンやカボチャなどはタネが実の中心にまとまっているので、タネだけ取り除いて食べることができますが、スイカはそういうわけにはいきません。このあたりにスイカの戦略がありそうです(くわしくは本書で)。

 本書には、ほぼ全項目に、美しいボタニカルアートを掲載(約60点)。イラストレーターの西本氏は、日本植物画倶楽部会員で、朝日新聞に植物画を連載するなど、この道の大ベテラン。絵を眺めるだけでも楽しい本です。

(担当/貞島)

稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)

1968年静岡県生まれ。静岡大学大学院農学研究科教授。農学博士。専門は雑草生態学。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省に入省、静岡県農林技術研究所上席研究員などを経て、現職。著書に、『身近な雑草のゆかいな生き方』『身近な野菜のなるほど観察記』『蝶々はなぜ菜の葉にとまるのか』(いずれも草思社)、『身近な野の草 日本のこころ』(筑摩書房)、『弱者の戦略』(新潮社)、『徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか』(東洋経済新報社)、『雑草キャラクター図鑑』(誠文堂新光社)など。

西本眞理子 (にしもと・まりこ)

1955年兵庫県生まれ。日本植物画倶楽部会員。神戸大学教育学研究科修士課程修了(美術科教育)。兵庫県内の小中学校教諭を経て現在、岡山理科大学非常勤講師。NHK文化センター福山、公民館、植物園等で植物画とフランス語を教える。著書に『植物画 はじめての彩色レッスン』『花のポートレート春・夏』『花のポートレート秋・冬』『やさしく学ぶ植物画』(いずれも日貿出版社)など。また『日本カヤツリグサ科植物図譜』(星野卓二・正木智美著、平凡社)の絵を担当。

この本のページ 草思社ブログもご覧ください

この本を購入する