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スマートフォンで蝶をうまく撮るには? 『海野和男の蝶撮影テクニック』海野和男著

 本書の最終頁(124〜125ぺージ)にスマートフォン(iPhone)で撮った蝶の写真が載っている。兵庫県で撮ったアサギマダラと都内自宅近くで撮ったアオスジアゲハだ。iPhoneでもこんなにきれいな蝶の写真を撮れるのだと素人目には感嘆しきりになるが、著者によるとまだまだらしい。iPhoneはレンズの位置が片端に寄っているので、フレーミングが難しいうえ、ズームにするとかなり精度が落ちるそうで、現行カメラでは昆虫写真には適していないと著者は述べている。

 でもこのぐらい撮れるのなら十分じゃないかと思うのだが、著者の昆虫写真家としての目は厳しいのだ。そうは言っても、著者も実は最近では、猫の写真をiPhoneで連続して撮るようになったという。技術も日々進化しているので、いずれiPhoneによる昆虫撮影テクニックも著者から開陳されるかもしれない。

 本書は著者がかつて書いた『海野和男の昆虫写真テクニック』(2012年刊、誠文堂新光社)さらに『増補改訂版 海野和男の昆虫写真テクニック』(2014年刊)の最新版ともいえる本である。矢継ぎ早に改訂版を出さざるを得なかったのは、この5年のデジタルカメラ技術の日進月歩ぶりを表している。

 著者はこの50年ぐらいのあいだ、新しい技術に飛びついて新しい映像を夢中で追いかけてきた。いまや、シャッターを押す前の写真が撮れてしまうというプロキャプチャーモードなる夢のような技術まで搭載されてしまった。しかし、もう年でもあり、本書ぐらいで最新技術の追求は打ち止めにしたいとも言っている。あとはスマートフォン写真のように技術勝負ではなくセンスが重要になるが、実は昆虫写真の要諦はこのセンスを磨くことがもう一つの重要な要素なのだ。蝶の生態をよく知ることを著者は本書で強調しているが、ここから始まるセンスの磨き方は本書の随所に書かれている。

 最新技術もスマートフォンも「昆虫を愛するセンス」で乗り切ろうというのが著者の主張である。

(担当/木谷)

海野和男(うんの・かずお)

1947年東京生まれ。昆虫を中心とする自然写真家。東京農工大学の 日高敏隆研究室で昆虫行動学を学ぶ。アジアやアフリカで昆虫の擬態写真を長年撮影。著書『昆虫の擬態』は1994年、日本写真協会年度賞受賞。主な著書に『蝶の飛ぶ風景』『昆虫 顔面図鑑』、また草思社より『図鑑 世界で最も美しい蝶は何か』『甲虫 カタチ観察図鑑』『世界のカマキリ観察図鑑』、近刊に『虫の目になってみた』など。日本自然科学写真協会会長、日本動物行動学会会員など。海野和男写真事務所主宰。公式ウェブサイトに「小諸日記」がある。http://www.goo.ne.jp/green/life/

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