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チョッちゃん
涙なしに読めない放浪犬チョッちゃんの物語
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岩合光昭さん【動物写真家】
動物はヒトが考えている以上に深くそして正確にヒトを観察しています。

 さすがに音楽家はリズムからものごとが始まるのですね。イヌの名前を「チョッちゃん」と付けたのがチョッ、チョッ、チョッと軽いステップを踏むような彼女の走る姿からひらめいたということですから得心がいきます。チョッちゃんが西井さん宅を自分の巣として選んだことは本を読み進んでいくなかでごく自然だったように感じます。動物はヒトが考えている以上に深くそして正確にヒトを観察しています。そのために、この家だ、と決めるのもヒトにはどうしてだろうと思えるのですが実は動物にとっては不思議ではないことも多いのではないでしょうか。西井さんのお嬢さんが学校との間で引き起こす事件もヒトの世界の思考がいかに狭いかを表しているようです。子育てもイヌやネコなどの動物と暮らすこともヒトとしての資質が大いに試されているのですね。
 チョッちゃんのヒトを見る目は彼女の出現からうかがい知ることができそうです。始めのうちは距離を置いて西井文恵さんやネコたちを観察していたチョッちゃんの姿はその場にいたようにイメージできます。そのあと、チョッちゃんが生んだ子イヌたちを文恵さんに託すことはヒトにとっては理解しがたいような体験ですがチョッちゃんには当たり前のようにも想像できます。チョッちゃんがヒトの動物として本来もっている潜在的な能力を呼び覚まさせてくれているような出来事がとくに興味深く読みました。本にところどころ挟み込まれている写真はどれも可愛くて西井家の皆さんが動物たちといかに密接に暮らしていて、写真のなかでイヌたちがカメラに向かって語りかけているのがわかるような写真です。一番可愛いシャッターチャンスをイヌたち自身が知っているのですね。
 私ごとですが、今ぼくのヒザの上にいるネコは我が家(八ヶ岳の麓です)から3キロほど離れた高速道路のインターから降りてくるぼくの車の音がどうやらわかるらしいのです。ネコはあわてて「おかえりなさい」の準備を玄関に向かってするそうです。これもネコにとってはなんということはないのでしょう。でもそのことを聞いてぼくは無性にうれしくなるのです。