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過激な貯金生活のその後を語る。
『私は男より預金通帳が好き』の著者、カン・ソジェ氏インタビュー
貯金ゼロから3年で1千万円貯める──
そんなちょっと無謀な体験を本にし、韓国で貯金ブームを巻き起こした時の人。
コミカルに描かれた「お金、仕事、恋愛」観は20代、30代女性の圧倒的な支持を得たという。
日本語版刊行を機に、初来日した彼女に、本の裏側、その後の生活について編集部で話を聞いた。
ある日、「貯金ゼロ」の自分に気づいた

──『私は男より預金通帳が好き』ですが、とても楽しく読ませていただきました。何よりタイトルが面白いですね。

 ありがとうございます(笑)。たしかにタイトルは、ベストセラーになった要因のひとつだと思います。もともとは「私はお金が麻薬みたいに好き」というタイトルにしようと思っていたんです。でも、過激すぎるというか、ちょっとシリアスに取られると困るなと思ってやめました。気に入ってはいたので章題のひとつにこっそり残してあるんですけど。

──今度の本では、3年弱、2年10カ月のあいだに約1千万円もの貯金をされた体験が語られていますが、貯金をはじめようと思われたきっかけは?

 貯金プロジェクトを思いついたのは、ちょうど仕事をはじめて5年目、27歳のときでした。これくらいの時期になると、肉体的にも精神的にも疲れを感じてスランプになってしまう人は多いんじゃないでしょうか。私自身、そんなスランプに落ち込んでいて、これからどうやって生きていこうかと、悩んでいました。こういう状況に陥ると、韓国の女性たちはたいてい、外国に出ようとします。思いきって充電して、新しいアイデアをつかんで、生活をやり直そうと考える人が多いんです。
 それで私も、ニューヨークに行こうと思い立ちました。いろんな準備をして友達にも話して、飛行機のチケットはいくらだろうとか、1年ぐらい住んだらどれくらいかかるかなとか、具体的に計算してみたら、だいたい100万円から200万円くらい。そこで気づいたんです。通帳には70万円しかない!

──70万円なら、すごく少ないってほどでもないですよね。

 かもしれません。でも当時カードの支払いとか税金を滞納していて……。全部払ってしまうと、ほとんど一文なしになることがわかったんです。
 なんだ、自分はいままで一生懸命生きてきたつもりなのに、実際には何もやってない、何も残ってないってこと? 何かおかしい! そう思ったのがきっかけですね。

──日本ではいま、株が流行っているのですが、財テクにトライしてみようとは思いませんでしたか?

 じつは、ちょっとやってみました。でも、知識が足りなくて、大損しそうになりました(笑)。
 韓国でも財テクがブームで、書店に行けば、短期間で何億貯めたという体験談やハウツー本が山のように積まれています。普段、本を読まない人でも、財テクに関する本なら1、2冊は読んでいるくらいです。
 ただ私は、多くの女性がそうであるように、財テクをするにもたいした元手もなく、知識もありませんでした。そんな私にとっての唯一の“確実な”財テクが貯金だったんです。それに地に足をつけて、コツコツ貯めるのって手応えがあって楽しいじゃないですか。
 この本を気に入ってくれた人がいるとするなら、きっとそういう部分に共感してくれたんじゃないかと思います。不動産の投資をして一晩で1千万儲けたという話なら、共感を得られなかったと思うんです。
 私が書いたのは、ただ一生懸命仕事をして節約して、貯金をしたという話です。そんな単純なことだからこそ、そこに何か基本的なことというか、忘れられていた何かを見出してもらえたのではないか……そんな気がしています。

 
必死にがんばるのは楽しい

──そうしてはじめられた貯金生活でカンさんは、睡眠時間を削って働き、食費もぎりぎりまで抑えて、鼻血が出たり、髪が抜けたりという、すさまじいがんばりようですね。しかし、なぜそこまで無茶な目標を?

 たいした理由はなくて、「1億ウォン」という言葉の響きがいいなと思ったんです。日本円で約1千万ですね。1億円まで行くと、ぜったいムリという感じがしますし、シングルの女の子が1千万円持っていれば、まあ、お金を持っていると思えるかなと。これくらい貯めれば、達成感も得られるだろうし……そういうふうにして決めました。

 

──意外とあっさり決められたんですね。

 そうなんです。これがどれだけ大変なことかなんて、ぜんぜん考えてなかったんです(笑)。
 やってみたら、眠れないし、忙しすぎるし、映画1本まともに見られないし、もう何度もあきらめようと思いました。
 でも性格的に、何かをはじめたら、最後までやり遂げないと気が済まない性格なんです。はじめは冗談半分、本気半分だったわけですが、せっかくはじめたんだから、とにかく最後までやってみよう、と。
 そういうときに通帳を見ると、自分がいま何をやっているのか、具体的に確認することができる。なぜ自分は苦しくて、大変な思いをしているのか、通帳がその理由を教えてくれるんです。だから「男よりお金がいい」なんて言ってしまうくらい夢中になっていきました。夢中になるのって楽しいんですよ。
 それに、何でも楽しく考えるタイプなので、大変な目にあっても、こういう体験も悪くないかな、なんて考えてしまうんです。それどころか、狂ったようにがんばるうちに、そのなかにビリビリする快感というか、興奮さえ感じたりしていました(笑)。

 

──通帳に恋してしまったんですね。いまも「男より預金通帳が好き」なんですか?

 じつは貯金をしていたときも恋はしていたんです(笑)。ただ、当時といまとをくらべると、考え方がだいぶ変わったように思います。当時は貯金のことで必死だったので、ただのお金持ちも魅力的に見えたりしました。いまは、中身をじっくり見ているので、理想の相手を見つけるのがもっと難しくなっているみたいで困っています(笑)。


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