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日はまた昇る――日本のこれからの15年
ベストセラー『日はまた沈む』でバブル崩壊を予測
前英『エコノミスト』誌編集長
ビルエモット
吉田利子訳
ISBN:4-7942-1473-1 
定価1260円(本体1200円)
2月28日トーハン調べ『週間ベストセラー』2週連続第1位!
著者来日で話題沸騰!
登場したマスコミ一覧
待望の日本復活宣言!
ゆっくり着実に歩むカメ(日本)が、足の速いウサギ(中国)に勝つ!  
少子高齢化が進んでも高成長は可能であり、労働力不足が格差を縮小すると説く。
まったく新しい視点で日本の未来を描く、いま話題の必読書!


日本の読者へ

 あきれるほど長い時間がかかってしまった。だがようやく、ほんとうにようやく、1989年から90年にかけて『日はまた沈む』を書いたわたしが、今度は本書『日はまた昇る』を書くことができるようになった。

 2005年10月以降の出来事は、あのときのわたしの考え方が正しかったことを裏書きしている。つまり日本は債務とデフレに悩まされた15年に及ぶ景気低迷から今度こそほんとうに回復したということだ。雇用も生まれているし、賃金は上昇し、エコノミストたちは成長見通しを上方修正している。しかも石油価格の上昇やアメリカの景気後退という局面にもかかわらず、である。
 2005年9月、小泉純一郎首相は経済改革の是非を問う国民投票を意味する解散総選挙に踏み切って勝利し、世界の関心を集めた。以来、外国人投資家はチャンスに乗り遅れてはならじと東京に殺到し、おかげで日経平均は急上昇した。日本の政治家や外交官の足取りは軽くなった。もう日本の弱さを謝ってまわる必要がなくなったという安堵と、傲慢な中国に対しても立場が強くなるだろうという安心感からだ。これは夢ではないかと頬をつねっている人々もいるのではないか。
 ある意味では、頬をつねって冷静になるのもいいかもしれない。日本に対する認識の変化はいつも急激で、行きすぎる危険がある。
 当面、日本経済が歩む道はまだ安穏とはいえない。下落率は非常に小さくなったとはいえ、依然として物価は下落しつづけているし、生産の伸びが見られるとはいっても秋のあいだは景気はまだらもようで、国内総生産の6.4パーセントという巨額の財政赤字を考えれば、2007年から08年には増税の可能性も高い。
 一方、賃金が上昇し、雇用の安定感も高まって、消費者は財布の(ひも)をゆるめかけているから、輸出や資本投資ではなく内需が成長を引っ張る可能性が出てきた。
 こうした所得の上昇、雇用改善、消費者の自信回復をもとに、わたしは今度こそ景気回復は本物で持続するだろうと考えている。とはいうものの、家計は増えた所得を全部消費に向けるよりも、過去10年に失った貯蓄の立て直しにまわそうとするだろうから、そのプロセスは緩慢だろう。
 悲観的な専門家は、長期的に見れば2005年秋の楽観的な見通しのあとに再び冬が来るだろうと予想する。日本の人口は減少に転じ、労働力も減る。近年の生産性の伸びはわずかだ。これは日本経済が短期的には回復しても、将来はやはり暗いことをうかがわせるものかもしれない。
 OECDは先に、今後2010年までの日本の成長率を、毎年わずか1.3パーセントと予測した。悲観的な専門家はここでも、中国こそアジアの星で、歩みの(にぶ)い硬直した日本を抜き去り、やがては地域の経済だけではなく政治も支配するだろうと主張する。

 だが、本書をお読みいただければおわかりのとおり、わたしは悲観的な専門家には(くみ)しない。それにグローバル化を支持し、政治的紛争を回避して着実にグローバル化を進めるべきだと考える西欧の評論家の一人として、日本が今後さらに力強く成長することが世界全体にとって重要だと考えている。
世界第二の経済がゆるやかな下降を運命づけられているとしたら、将来、東アジアには二つではなく唯一の経済大国しか存在しなくなり、インドをべつとすれば、中国の台頭を牽制(けんせい)できるのは、太平洋をはさんではるか西にまで手を伸ばす、あるいは伸ばしすぎるアメリカだけということになる。それは世界にとって危険ではないか。
 幸い日本は衰退を運命づけられていない、とわたしは確信している。衰退などとんでもない。ゆっくり着実に歩む者は、イソップ童話のウサギとカメのようなおとぎ話の世界だけでなく、現実のレースでも勝利する。

(中略)

 ウサギのように足の速い中国はアジアの隣人にとって賛嘆の的だが、同時に不安をも呼び起こす。日本が着実で繁栄した信頼できるカメであることを示せば、他のアジア諸国にとっては中国と対比しうる魅力的な存在になるだろう。
 イソップの寓話ではカメがウサギとの競走に勝つ。日本も同じように勝利する可能性がある。日本のほうが人口が少ないから、永久的に中国をしのぐ経済大国でいることはできないだろう。しかし再び日は昇りはじめた。さらに競争と効率化と生産性上昇を促す改革が続けば、日本はアジア太平洋地域の、そして全世界の人々の繁栄と平和に役立つことができる。