「本件事件当時、被告[主犯の両親]において、被告A[主犯]に対して自動車を買い与えたこと等非難されるべき一定の落ち度は認められるものの、本件事件に関する具体的認識を欠いていた以上、既に19歳となていた被告Aの行動を効果的に統制したり、監督したりすることは現実的には著しく困難であったというべきであり、道義的非難を超えて、監督義務違反を認めることはできない」
「…以上の検討を総合すると、石橋警察署警察官において、正和が死亡するに至るまでに加害者らを身柄拘束するなどして、正和の身柄を確保することができ、正和の生命を救い得たことを是認し得る高度の蓋然性が認められるというべきである。よって、石橋警察署警察官が上記のように警察権を行使することによって加害行為の結果を回避することが可能であったと考えるのが相当である」
「…したがって、石橋警察署警察官が職務上の作為義務に違背して警察権を行使しなかったことにより、加害者らによる正和の殺害行為の招来を防止できず、正和が死亡するに至ったといえ、このような石橋警察署警察官の警察権の不行使は国家賠償法1条1項にいう故意又は過失による違法な公権力の行使に該当するから、被告栃木県は、正和の死亡について損害賠償責任を負うというべきである」
「11月1日には…[数日前、被害者に会った同僚2人]から、加害者ら[A、B、C]に脅されるような形で金を貸すことになったことや、犯人は加害者らであり、正和の借金の申出は加害者らにやらされているであろうこと、その際、正和が顔全体が腫れ上がってけがをしていたこと等について[石橋警察署警察官は]事情聴取の結果聞き及んでいたことが認められる」
「11月1日の時点で…加害者に対する嫌疑は、起訴等はともかく、逮捕状を請求することができる『罪を犯したと疑うに足りる相当な理由』(刑事訴訟法199条1項)には達していたものと認められ、必要な裏付け調査を行えば、石橋警察署警察官において逮捕状請求を行うについて支障はなく、仮に、石橋警察署において強制処分に慎重を期すことを考慮したとしても、加害者らに対して重要参考人として事情聴取を行うことは必須であった…」
「正和は…11月30日の原告光男への電話の際、I主任が警察であると名乗ったことが引き金となって、加害者らによって殺害されているところ、仮に、11月1日の時点で加害者らによる正和に対する暴行や傷害をも視野に入れた形での恐喝事件として取り扱って捜査を開始したとすれば、このような偶発的な事情[「警察だ」と名乗ったこと]による加害者らの認識の変化とそれに伴う加害者らの証拠隠滅の一環としての正和の殺害はなかったと考えられる…」
「I主任[石橋警察署生活安全課、担当警察官]は、 11月30日に被害者の電話を受けた際のやりとりについても、亡洋子が『このデレスケ野郎』などと正和を電話口でののしっている際に電話が切れた等と述べるなど、加害者に同行していた少年の極めて信頼性の高い供述や、[その場に居た、Bの母親の]本人供述から認められる事実と明らかに反する供述に終始していること(…I主任の供述は、亡洋子の発言の内容も含めて全く信用できない。)等の事情が認められるのであって、…I主任及びA課長[石橋警察署生活安全課課長]らの被害者同僚からの事情聴取に関する証言は到底信用できない」