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救われた一言、気づきをくれた一言……言葉をめぐる経験をやわらかな筆致で綴った心温まるエッセイ

本書は、沖縄を拠点に精力的な創作活動を展開している詩人・白井明大が、これまでの人生行路の中で出会った「自分の支えとなった言葉」「気づきをくれた言葉」について綴ったエッセイです。
たとえば、元上司から届いた年賀状に書き添えてあった「焦らず、着実に」という一言であったり、友人がふと口にした「手を抜かずにやっていれば、誰かが見ていてくれる」という一言であったり、言葉そのものはいずれもいたって平凡なのですが、そういう言葉が、先の見えない暗闇の中でもがいていた若き日の著者に大きな勇気を与え、立ち上がる力を授けました。司法浪人としての日々に終止符を打ち、二十代後半になってやっと社会人としての歩みをはじめて悪戦苦闘する著者には、実感のこもった「当たり前の言葉」が希望のともしびになったのです。
「希望というのは、夢や成功にじかに結びつくものというよりも、むしろいまの難所をどう切り抜けるか、どうしたらこのドン底の苦境から脱け出せるか……といった抜き差しならない実際問題の迷路をさまよっているときに、こっちだよ、と道を知らせる星明かりのようなものだった」と著者は書いています。そして、「そんな希望は、時に誰かがくれた言葉という姿で、ぼくの前に現れた」のです。
本書をお読みいただければ、言葉というものが時と場合によって計り知れない力を持ちうるのだということが、おわかりいただけると思います。「あきらめないで」「好きなことを大事に」「締切を守ること」「けなすのは簡単」「夜明け前がいちばん暗い」「気をつけていらしてください」……。何の変哲もないシンプルな言い回しであっても、そこに血の通った思いが込められている言葉は、時に誰かの支えになり、絶望の波を押し返す防波堤にもなりうるのです。
この本が、これから新しい人生の節目を迎え、未知のフィールドを歩んでいく読者に、なんらかのヒントを手渡すことができたら、これにまさる喜びはありません。
(担当/碇)
