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尹錫悦・新大統領は韓国を正常化できるか。どう考えても無理だろう。

韓国の大統領はなぜ逮捕されるのか
――北朝鮮対南工作の深い闇
西岡力 著

 韓国の大統領選が3月に行われて、この5月に新大統領・尹錫悦(ユン・ソギョル)が誕生した。文在寅(ムン・ジェイイン)・前大統領の悪夢の五年間が終わって、韓国は正常化できるのではないかという日本の一部に期待があるが、それは無理だろうと著者は言っている。0・7ポイント差という僅差での勝利は、いまだに社会に分断があり、極左的勢力が根強く勢力を保っている証拠である。しかも肝心の尹氏に保守の気概があるわけでなく、文在寅政権で検事総長に任命されて保守派粛清(朴槿恵弾劾逮捕など)を行った当事者であり、ただ権力闘争で追われ下野して対立候補になっただけの人間だ。

 ただし、文憎しの思いがあるなら、文の在任中の不正を暴いて逮捕ぐらいはしてくれるのではないかと支持者は思っているだろうが、いまのところそういう動きもないようだ。

 韓国の大統領は、全斗煥、盧泰愚から始まり最近の李明博、朴槿恵まで、とくに保守系の大統領はことごとく退任後逮捕されてきた。また盧武鉉のような革新系でも、退任後に親族の汚職を追求され自殺に追い込まれることもあった。権力の移行期に過去の遺恨が噴き出して報復的な訴追が行われることが多かった。

 尹大統領の今後の施策については予断を許さないが、ウクライナ侵攻が勃発後、米国は米韓日の三国の結束を固めようとし、中ロ北朝鮮への備えを強くしているので、従来の親北反日反米政策を当面は軌道修正してくるのは間違いない。かといって、北朝鮮の工作が社会の隅々まで行き渡っている現状、いつ親北的な南北連邦国家が生まれて来るかもわからない。本書は朴槿恵・文在寅政権下のこの10年でどのように親北(韓国風に言うと従北)化が進んだかをつぶさにたどり、いま韓国社会が直面している危機の構図を、韓国問題の第一人者が最新情報をもとに描いた韓国論である。

 韓国大統領はいつ何時、逮捕されるかもしれないという、危ういパワーバランスの上に立っている。そのことを思い出させてくれる警世の書である。

(担当/木谷)

著者紹介

西岡力(にしおか・つとむ)
1956年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院修士課程修了。外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務、『現代コリア』編集長、東京基督教大学教授などを経て、現在(公財)モラロジー道徳教育財団教授・歴史研究室室長。麗澤大学客員教授。「救う会」会長。歴史認識問題研究会会長。著書に『日韓誤解の深淵』(亜紀書房)『増補新版・よくわかる慰安婦問題』(草思社文庫)『でっちあげの徴用工問題』『日韓「歴史認識問題」の40年』(草思社)『わが体験的コリア論』(モラロジー道徳教育財団)など。
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