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岩波の偽書に謝罪なし。和田春樹の日本は破滅しなかったからいけない、という論理。

編集者は1970年代に岩波新書のベストセラー『韓国からの通信――T・K生からの報告』をリアルタイムで読んだ世代である。本書『日韓「歴史認識問題」の40年』の中で著者はこの本が半分以上捏造であり、偽書だったことをつぶさに書いている(第5章)。当時の岩波新書の信頼性、影響力の大きさは今では計り知れないだろう。ほとんどの岩波新書の新刊は軒並みベストセラーとなり、学生をはじめインテリ(インテリ・モドキも)はみな読んだものだ。
これが『世界』に連載された記事で、T・K生という名のもと朝鮮総連系の在日韓国人(池明観)がソウルや韓国内で起こったことをあたかも目撃したかのように書いているがほとんどデマである。韓国の朴正熙ほかの右派政権がきわめて悪辣な政権だという印象をもたらすために書かれたのだ。あることないこと書き放題である。これをして偽書というしかないだろう。完全なプロパガンダであり、岩波新書の良質な歴史に泥を塗った本である。しかしこれについて岩波書店はいまだに謝罪していない。
もう一つ、本書が指摘しているのは和田春樹東京大学名誉教授の歴史観である(第4章)。和田春樹教授は拉致問題が発覚したときもこれは拉致ではないと言いはったし、慰安婦問題、徴用工問題などに一貫して北朝鮮と韓国内の親北左翼の代弁者として世論を惑わしてきた。彼が編者としてあらわした『日本は植民地支配をどう考えてきたか』の編者前書きでこのようなことを書いている。
つまり現在の日本はなぜドイツのように植民地に対して謝罪・賠償をちゃんと行えないのかというお決まりの論調に加えて、ドイツと日本の戦後処理の違いを述べている。ドイツは1945年5月ソ連軍のベルリン侵攻の後、首都攻防戦を激しく戦い、ヒトラーは司令部地下で自決しドイツ第三帝国は完全に敗北・解体された。
しかしかたや日本はポツダム宣言を天皇の聖断で受諾し降伏した。本土決戦は回避され戦前の体制は中途半端に温存された。あのときドイツのように九州から東京まで徹底抗戦を唱え、本土決戦を行っていれば、惨禍はひどかっただろうが、戦前の体制は一掃されたのだ。負け方が中途半端だからいけないという論理である。
東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎の原爆投下と続く何百万という国民の犠牲の後に、米軍上陸と本土決戦があったならどうなっていただろうか。和田春樹はこんな日本など壊れてしまえばよかったのだと言っているのだ。日本に対する憎悪に唖然とするばかりだ。
本書を読んで多くの蒙を開かれた。日韓関係だけでなく今日の言論状況を考える一助となる本である。
(担当/木谷)
