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加齢はパフォーマンスの「敵」ではなく「味方」だった!

ここ数年の年長アスリートの活躍には目を見張るものがあります。2019年は4月にイチロー選手が45歳で引退しましたが、阪神の福留孝介選手は42歳でも活躍中。サッカーの三浦知良選手にいたっては52歳で現役です。またテニスでは、30後半のフェデラーとナダルが、トップ争いをもう何年も続けています。普通に考えれば、若い方が身体のパフォーマンスは高いはずです。しかし、これらの現状を見ると事実は逆に思えてきます。つまり、歳を取るほどパフォーマンスは高くなるのではないか、と……
本書はまさに、「アスリートは歳を取るほど強い」ことを、科学的に正しいと明らかにするものです。トップの年長アスリートがどのような訓練、回復法、食事を行っているのか取材し、彼らが熟年になっていっそう活躍を続ける謎に迫ります。選手だけではなく、スポーツ科学者や心理学者らまで、最新の科学的見地を踏まえたさまざまな知見が盛り込まれています。そこには従来の常識を覆すようなものも。
“アスリートの身体は最新科学の実験場”、という言葉が出てくるように、本書のいくつかの技術はプロ向けです。しかし一方、「最もワクワクするのは、実現の兆しが見えかかっているあっと驚くような新しい小道具や、医学的な奇跡に対してではない。僕たちがいま利用できる知識なのだ」と著者がいうように、素人でも意識すれば参考にできることこそ重要であり、それが本書の主役です。これらを取り入れることで、加齢は私たちにとってパフォーマンスを向上させる「武器」となるのです。また、ドナルド・トランプの「身体はバッテリーのようなものだと信じているから運動はしない」という言葉を受けて、「身体はバッテリーではなく銀行であり、運動はローンだから、貸せば貸すほど利息がついて返ってくる」という言葉も出てくるように、運動することは老後に向けて身体の「利息」を溜めておくことにもなるのです。
ここで一つ、「速さ」に関する内容を紹介します。常識的には、アスリートは若いほど身体スピードが速く、したがって試合でも有利に立ち回れることになります。ところが、本書に登場する、アメリカの女子サッカー選手で2015年になでしこジャパンを完膚なきまでに叩きのめしたあのカーリー・ロイドは、なぜか身体のスピードを「遅くする」ためのトレーニングを行っていたのです。実はそこに、歳を取ると有利になることと深い関係があるのですが、その詳細が気になる方は、ぜひ本書をお読みいただければと思います。
歳を取るほどスポーツが上達することは、プロにはもちろん朗報ですが、そうでない人にも同じぐらい重要なことです。それは人生100年と言われる時代に、これからの長い人生において老いるほどにスポーツが上手くなるとしたら、それほど明るい未来はないからです。それを現実にしたいと真剣に考える人に、ぜひお手に取っていただきたいと思います。
(担当/吉田)