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郵便配達の仕事に従事しながら6年がかりで東大に合格。 フルタイムの仕事と学業を両立させた中年男性の奇跡の実話!

人生100年時代を見すえたキャリアプランの一環として、「社会人の学び直し」に注目が集まっています。ですが「働きながら学ぶ」のは、現在でも決して容易なことではありません。本書は今よりもはるかにその両立が難しかった時代(著者は1997年に東大入学、2001年卒業)に、郵便配達員としてフルタイムでの仕事を続けながら東大に入り、ストレートで卒業した著者による前代未聞の「学び直し」の記録です。
郵便配達の仕事を天職と考え、実際に東大卒業後も定年まで郵便配達員として勤め上げた著者がわざわざ東大をめざした理由は何だったのか? そして、実際にはどんな学生生活を送ることになったのか? 詳しくはぜひ本書をお読みいただければと思いますが、さまざまなハードルを乗り越え続けた著者を支えたのが「自分には、やり残したことがある」という思いだったという点は、強調しておきたいところです。そういう思いに苛まれることがあっても、日々の慌ただしさに追われて特に何をするわけでもなく年齢を重ねっていってしまうのが私たちですが、著者はそこを諦めず、自身の燃える向学心を満たすための場所と時間を手に入れたのです。
とはいえ、著者は決して声高に「正しい生き方」を語ったりはしません。実際に起こったこと、出会った人たちを明朗な文体で描写するところに著者の真骨頂があります。〈出席をとるとき、(最初、先生は)「小川君」と呼んだが、第二回目の授業からは、「小川さん」に変わった〉といった調子で、飄々とユーモラスに自身の経験をつづります。また、〈(この同級生は)説明は難しいが、東大生と聞いて、誰もが「あー、やっぱり」と納得するようなタイプの好青年である。私とは全然違った〉という叙述に見られるような、独特の観察眼も本書に味わいを添えています。
学び直すことは生き直すこと。そして、それはやる気になれば自分にもできるのではないか。ページをめくるうちにそんな気分にさせられる一冊です。
(担当・碇)
