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日本の学校は今のままでいいのか?
苦悩する教育現場からの真摯な問いかけ

文部科学省の発表によると、昨年度の公立小学校の教員採用試験の倍率は2.8倍で過去最低となりました。もっとも倍率が高かった2000年度は12.5倍ですから、驚くべき人気低迷ぶりです。また毎年、5千人前後の教員が心を病んで休職に追い込まれている実態も広く知られるようになっています。いま日本の教育現場で何が起こっているのでしょうか。長年、神奈川県内の公立学校で教鞭をとってきた著者は、問題の根源は「学校の接客業化」にあると断言し、いびつな「顧客志向」で本来の教育機能を失いかけている学校の現状に警鐘を鳴らしています。
本書の「はじめに」で著者は、ある校長が口にした「先生も聖職者と見られている時代ではありません。子どもや保護者が大いに満足できるように、サービス業としての視点も大事にしてください」という言葉を紹介しています。著者ももちろん、子どもや保護者の考えを尊重すること自体に異存はありません。ですが、「学校においてサービス業という言葉は、『顧客、つまり子どもや保護者の望むことを極力実現させるべきだ』というニュアンスで使われている。そこにはたして教育的な意図や戦略があるのか、大いに危惧される」という問題があるのです。
〇「学校に行きたがらないので先生が迎えにきてください」
〇「ウチの子の嫌いなものは給食に出さないでください」
〇「ウチの子がクラスで一番の『良いところ』を挙げてほしい」
こんな保護者からの要望にも対応せざるをえないのが今の学校だと著者は述べています。そんなふうに子どもたちを「お客さま扱い」することが、彼らの将来にとってプラスにならないのは火を見るより明らかなのに、先生たちは「サービス業としての視点を持て」という指示のもと、保護者の要望にノーと言うことが難しいのです。時に一部の保護者による恫喝的な要求に右往左往し、一方で教育者としての本分を果たせない無力感や苛立ちに日々さいなまれる。こんな状況が日本の先生たちを追い詰めているのだということが、本書をお読みくださればお分かりいただけるかと思います。著者は本書の結びで、今こそ教師は「とりあえず承る」という姿勢を捨て、自身のプロフェッショナリズムを確立することが不可欠だ、と述べています。教師自身のためではありません。子どもたちがより良い未来をつかめるようにしっかりと教え、導くためです。この勇気ある問題提起の書が多くの読者に届くことを願ってやみません。
(担当/碇)
