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「映画」と「科学」の意外な共通点

ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学
リック・エドワーズ 著 マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳

◆映画と科学の共通点「死を避ける方法を探しつづけていること」

 どうにかして「死」を逃れたい……。多くの映画は、このためにストーリーが展開し、人食いサメや殺人ロボット、全面核戦争と戦ったり逃げたりして、私たちはそれを夢中で観ることになります。科学も、「真理の探究」という高尚な目的はあるものの、実際上は、感染症から加齢、小惑星衝突にいたるさまざまな「死」の要因を回避する方法を探究・開発する営みとして、役割を果たしてきました。

 つまり、「映画」と「科学」と「死」は、とっても相性がいいテーマなのです! 

◆パンデミックから世界最終戦争まで、11の映画の死と滅亡のシナリオを科学する

 本書は11の映画について、それぞれ1章ずつを割り当てて、ウイルスや不眠、人工知能兵器など、死や滅亡をもたらす災厄にまつわる科学を探究していくものです。意外な映画が真剣に科学を踏まえて描かれていたり、実際の科学者が本当に映画と同じようなことを考えているとがわかったりして、驚かされること間違いありません。

 例えば『エルム街の悪夢』の中で描かれる「悪夢で死ぬ」という話は、1970年代に大量虐殺の恐怖を味わってアメリカへ逃げてきたベトナムやカンボジアの難民たちの間で、PTSDによる不眠と悪夢、それに続く睡眠中の心臓発作による死が数多く起こり、その一例が報道されたことが脚本のもとになったといいます。そうなんです! 悪夢は時として、本当に人を死に追いやることがあるのです。

 また、世界最終戦争を描いた『博士の異常な愛情』では核抑止力のゲーム理論が重要なテーマになっています。そのゲーム理論によれば、米国トランプ前大統領の予測不可能な北朝鮮に対する外交は、相手に警戒感を抱かせて慎重な対応を促すことにつながり、意外にも、世界をより安全にした可能性があるとのこと。その名も「マッドマン・セオリー(狂人理論)」と呼ばれる戦略で、理論的な根拠があるというのです!

 そして、第1章で紹介される映画『コンテイジョン』は真剣にパンデミックを描いた作品で、本書でも次のパンデミックを予言するものと高く評価されています。実は、本書の原書は、コロナ蔓延の直前に刊行されたのですが、ウイルスの生物学から感染の数理モデルまで、著者らによる解説はコロナ以後に読んでもビックリするほど的を射たもので、いままさに読まれるべき内容となっています。

 本書は、著者2人が出演するイギリスの人気Podcast番組から派生したもので、前作『すごく科学的― SF映画で最新科学がわかる本』(草思社刊)に続く第2弾です。前作同様、クスリと笑える2人の映画談義の掛け合いも魅力のひとつ。映画好きにも科学好きにもオススメでき、映画も科学も、よりいっそう楽しめるようになる1冊です。

(担当・久保田)

●本書で扱う映画

『コンテイジョン』……映画から感染を防ぐ方法が学べる?
『アルマゲドン』……小惑星衝突回避にペンキが役立つ?
『ジョーズ』……ヒトが社交的なのは捕食者のおかげ?
『ターミネーター』……兵器の自動化は現実にかなり進んでる?
『トゥモロー・ワールド』……人類は不妊で滅びつつある……?
『ジオストーム』……温暖化は工学的手段で止められる?
『エルム街の悪夢』……悪夢のせいで死ぬことが実際にある?
『人類SOS! トリフィドの日』……植物には知能があり会話も?
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』……人類は近い将来、老化を克服する?
『博士の異常な愛情』……最終戦争がまだ起きてないのはなぜ?
『フラットライナーズ』……臨死体験はつくりだせる?

著者紹介

リック・エドワーズ
ライター、テレビ司会者。BBC Oneのクイズ番組「!mpossible」の司会をしている。ケンブリッジ大学で自然科学の学位を取得したが、ようやくそれが少しは役立つようになった。
マイケル・ブルックス
著述家、科学ジャーナリストで、「ニューサイエンティスト」誌のコンサルタント。現在のところ、彼の最大の業績は、量子力学で博士号を得たことではなく、リックが好きな科学書『まだ科学で解けない13の謎』(草思社)を書いたこと。

訳者紹介

藤崎百合(ふじさき・ゆり)
高知県生まれ。名古屋大学大学院人間情報学研究科、博士課程単位取得退学。バイザー『砂と人類』(草思社)、アーニー他『ぶっ飛び!科学教室』(化学同人)など、主に科学に関する書籍の翻訳を幅広く手掛ける。最近は女性だらけのスタトレ新シリーズに胸熱の日々。
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