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「あらゆるものが感染する時代」を生きるために
感染の法則
――ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで
アダム・クチャルスキー 著 日向やよい 訳

収束の兆しが見えないコロナウイルスは、私たちに「感染」する最たるものですが、これ以外にも、リーマンショックなどの金融危機の連鎖から、ネットミームの拡散、さらには肥満、犯罪、自殺まで、私たちは驚くほど様々なものが「感染」する時代を行きています。本書は、これらの感染について、「どのように物事が広がり、収束してゆくのか」を、数理的な視点を用いながらわかりやすく解説しています。
マラリアなどとの闘いの歴史の中で感染症数理モデルが発明されますが、ここでは私達にもなじみの言葉になった「再生産数R」や「集団免疫」「スーパースプレッダー」といった考えがどのように誕生したか、またどの要因がそれらにとって重要なのかに詳しく触れられます。また感染爆発の仕組みに迫る章では、「ネットワークの構造」自体の重要性が述べられます。例えば、「異類結合」型のネットワークはハイリスクの人とローリスクの人の間にリンクが有り、最終的に巨大な感染を引き起こしやすいのですが、リーマンショックがあれだけ大きな連鎖になったのは、銀行同士のつながり方がこの異類結合だったからなのです。これ以外にも、ネットにおいて意図的に「バズらせる」ことが可能かどうかや、「正しい情報に晒され続ければ人の考えは改まるのかどうか」「孤独感はなぜ伝染できるのか」「東日本大震災のときに流れたデマはどうすれば減らすことが出来たのか」といった興味深い問題も取り上げられています。この感染時代に生きるすべての人の「知的なワクチン」となる、これ以上ないほどタイムリーな1冊です。
(担当/吉田)