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いま、都市こそが生物進化のフロンティアだった!

都市で進化する生物たち
――“ダーウィン”が街にやってくる
メノ・スヒルトハウゼン 著 岸由二 訳 小宮繁 訳

 進化といえば、「手つかずの自然で、何千年もかけて起こるもの」。こう考えている人が多いのではないでしょうか。実はそうではありません。人間が、自分たちのために作り上げた都市こそが、いま生物にとって進化の最前線になっているのです。本書は、そんな私たちの身近に起きている進化の実態に迫ります。

 著者は、都市環境に対する適応を、網羅的かつ多角的に紹介しています。その中の重要な例の1つに、「前適応」と呼ばれる現象があります。これは、都市にある環境と似た環境が自然界に存在し、その自然界の環境に適応していることで、都市の似た環境にスムーズに住み着くことができるというものです。また、好奇心が強く、知的な性格の生物ほど、都市への適応がしやすいということも分かってきています。

 一方、なぜ都市は生物にとって進化を促す場所になったのでしょうか。それには様々な理由があります。都市がもともと豊かな場所に作られるので環境として好条件であること、都市の周辺の環境が悪化して生物が流入してくること、車や毒性物質などの危険が淘汰圧を高めること、などがあります。これらの条件が重なることで、都市は生物にとって様々な生態学的な余地を提供しているのです。しかも、世界中の都市が似たように発展しかつ物流が世界的につながることで、同時多発的に似た環境が出現し、この都市進化の流れは、全世界的に生じている現象になっているのです。

 このように考えると、都市は人工物であっても、生物からすれば「自然」に他なりません。本書を一読いただき、生物にとっての都市の価値について考えを巡らせていただければ幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

メノ・スヒルトハウゼン
1965年生まれ。オランダの進化生物学者、生態学者。ナチュラリス生物多様性センター(旧オランダ国立自然史博物館)のリサーチ・サイエンティスト、ライデン大学教授。著書に『ダーウィンの覗き穴:性的器官はいかに進化したか』(早川書房)などがある。

訳者紹介

岸由二(きしゆうじ)
慶應義塾大学名誉教授。生態学専攻。NPO法人代表として、鶴見川流域や神奈川県三浦市小網代の谷で〈流域思考〉の都市再生・環境保全を推進。著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)『リバーネーム』(リトル・モア)『「奇跡の自然」の守りかた』(ちくまプリマー新書)など。訳書にドーキンス『利己的な遺伝子』(共訳、紀伊國屋書店)ウィルソン『人間の本性について』(ちくま学芸文庫)ソベル『足もとの自然から始めよう』(日経BP)など。 鶴見川流域水委員会委員。

訳者紹介

小宮繁(こみやしげる)
翻訳家。慶應義塾大学文学研究科博士課程単位取得退学(英米文学専攻)。専門は20世紀イギリス文学。2012年3月より、慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、雑木林再生・水循環回復に取り組む非営利団体、日吉丸の会の代表をつとめている。訳書にステージャ『10万年の未来地球史』(岸由二監修、日経BP)。エマ・マリス『「自然」という幻想』(共訳、草思社)
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