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蝶は視覚動物なので、あんなに奇麗なのだ。

増補新版 世界で最も美しい蝶は何か
海野和男 写真・文

 人間が歴史的に惹きつけられた自然にある美しいものには、宝石の結晶や夜空の星や植物の花などともに、空に舞う蝶がある。とくに熱帯の大型の蝶には18、19世紀の欧米の博物学者や収集家が夢中になった。本書はその美しさの精髄を集めたものだ。 なぜ蝶は美しいのか。なぜあれほどに美しい色彩や模様をまとっているのか。著者は「はじめに」の中でこう書いている。

「蝶は、他に比べるものがないほど美しく、生物の多様性を表す極致が蝶であると思う。蝶は大きな翅を持ち、その翅に様々な色や模様をつけることで、仲間同士のコミュニケーションに使ったり、敵から身を守るために使ってきた。そして蝶が我々と同じように視覚動物であることが、蝶の多様性に我々が目を見張る大きな理由である」

 この最後の「蝶が我々と同じように視覚動物であることが、蝶の多様性に我々が目を見張る大きな理由である」という指摘が重要である。

 蝶は視覚動物なのである。蝶の目に世界がどのように見えているかはよくわからないが、美しい色彩や模様が彼らを惹きつけ、彼らの関心の中心をなしていることは疑いないようだ。異性を惹きつけるための色彩、捕食者(鳥類など)から身を守るための模様、進化の過程で、そこにどんどん専心し特化していったがための美しさなのだ。

 人間が蝶を美しく感じそれを手に入れようとすることと、蝶が過剰なほど奇麗な模様を身にまとうこととには、同じ視覚動物として方向性において、自然で無理がない一致がある。

「蝶って、自分が美しいということを知っていて、さらにもっと美しくなろうとしてきたんだ」――これって素人の間違った感想なのだろうか。

 とにかくこの見事な色彩と変容を写した写真図鑑を一度見ていただきたい。

(担当/木谷)

著者紹介

海野和男(うんの・かずお)
1947年東京生まれ。小さい頃より昆虫の魅力にとりつかれる。東京農工大学の日高敏隆研究室で昆虫行動学を学び、その後昆虫を中心とする自然写真家の道に進む。著書『昆虫と擬態』(平凡社)は1994 年、日本写真協会年度賞受賞。ほかに『昆虫顔面図鑑』『大昆虫記 熱帯雨林編』『蝶の飛ぶ風景』『デジタルカメラで昆虫観察』など多数。また草思社より『世界のカマキリ観察図鑑』『世界でいちばん変な虫 珍虫奇虫図鑑』など。日本自然科学写真協会会長、日本動物行動学会会員など。海野和男写真事務所主宰。1990年に長野県小諸市にアトリエを構える。公式ウェブサイトに「小諸日記」がある。
http://www.goo.ne.jp/green/life/unno/diary/
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