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「スゴい」「ヤバい」でなく
「杞憂だね」「五十歩百歩だ」と言おう

SNSの発達の影響か、日本語の乱れがはなはだしくなっている。「スゴい」「ヤバい」と言った言葉の多用で語彙は貧困になり、短文で、どぎつい言葉の氾濫が見られる。
本書の著者の齋藤孝さんは『語彙力こそが教養である』(角川書店)『大人の語彙力ノート』(ソフトバンク)などのベストセラーで、若者たちに「語彙力」「表現力」「コミュニケーション力」が社会での活躍に欠かせないということを訴えている。本書でも「故事成語」という古くからある慣用句を子供の時から覚えておくことの重要性を主張している。国語のテストの点数を上げるという直接的な効用だけでなく、子どもの生きる力を養ってくれるというのである。「人間は言葉でものを考えるから、言葉が少なければ、感情や思考が単純になってしまう。」「スゴい、ヤバいの一言ですべてをすましてしまうと、それ以上は考えなくなって、思考が止まってしまう。」(本書はじめにより)
「考えすぎ」「心配しすぎ」のことを「杞憂だね」と言うと、教養人に見られるし、表現に深みが生まれる。これは「杞憂」が古い中国の故事から生まれた慣用句であるからだ。『列子』にある逸話で、「杞」という国の人が天から空が落ちてくることを心配して夜も眠れなくなるという話が由来である。「杞憂」の「杞」というのは古代中国の国名なのである。また「たいして違いがないこと」を「五十歩百歩だね」と言うが。これは『孟子』にある逸話が由来で、孟子がある国の王様に「戦場で五十歩逃げた兵士と、百歩逃げた兵士は臆病であることに変わりがない(だから論功行賞では差をつける必要がない)」と助言した故事がもとになっている。こうした歴史的背景があって出来てきた慣用句を使って語彙を豊かにしていると(あるいはその背景まで知っていると)、思考や感情まで豊かになり、他人との会話が広がり、物事がスムーズにいくことが多い。人間は言葉でできている動物なのである。
本書は「古い慣用句」「決まり文句」「面白い昔からの表現」「古代中国の逸話が由来の言葉」――いわゆる「故事成語」を楽しいイラストで覚えるように構成されたとても役に立つ教育絵本である。
(担当/木谷)