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25音の長大な季語も楽しい。
25音の長大な季語「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日」も楽し。音数で整理された画期的な歳時記。
俳句の最小限のルールは五・七・五という音数による定型と、その時節の季語が含まれることです。それなら季語を音数ごとに整理しておけば作句に役立つのではないかという発想のもとに本書は作られています。春編・夏編・秋編とすでに3冊刊行され、いずれも好評を博しています。ようやくこの度、立冬(11月8日)を控えて冬編の刊行となり、四季がそろいました。
冬の季語は一音の「炉」(ろ)、二音の「寒」(かん)「暮」(くれ)などから始まり、本書では最長25音の「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日」(どうていせいまりあむげんざいのおんやどりのいわいび)までが入っています。
25音と言えばすでに定型をはみ出していますし、どういう季語なのかと不審に思われる人が多いと思いますが、『角川大歳時記』などにも載っているれっきとした季語なのです。
キリストの母、聖マリアをその母アンナが身ごもった日、カトリックでは12月8日聖胎節のことです。例句に
「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日とはなれり 夏井いつき」
「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日と歳時記に 正木ゆう子」
などがあります。いずれもこの長大な季語をあえて使った「遊び句」ともいえるものです。
このように、本書はさまざまな音数の季語を自由に操り、俳句という融通無碍の境地に遊ぶことを推奨する歳時記です。
監修者の岸本尚毅さんは本書の「はじめに」で季語の選択の細心さに触れて、高浜虚子が昭和三十一年暮れの句会で詠んだ
「鎌倉の此処に住み古り初日の出」
が翌年(雑誌「玉藻」三月号)には改稿され
「鎌倉のここに住みふり初日かな」
になったことを例として挙げています。「初日の出」(5音)を「初日かな」(3音)に替えた虚子の意図はどこにあったのかを類推して、この日の句会は大野伴睦などの政治家や吉屋信子などの有名な小説家を交えた句会であったために、やや気負った言葉の選択になったことを自身反省して時を経て「初日かな」と替えたのではないかと書いています。
「虚子先生ならぬ我々が、句の表現を綿密に吟味するとき、本書が大いに役立ちます」と岸本氏は書いています。こうした微妙な表現を楽しむときに本書は役に立つことでしょう。
(担当/木谷)