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ミドリガメは6月から「輸入・販売」が禁止され、ますます排除の対象になった

今年2023年6月からミドリガメとアメリカザリガニが条件付特定外来生物法の改正・施行により「輸入・販売」が禁止になった。今飼っているものはそのまま飼っていいのだが、新たに購入して買うこと、放流は禁止であり、罰則もできた。ミドリガメは今、家庭でペットとしては180万匹が飼われていて、自然界には800万匹生息していると推定されている(環境省調べ)。今飼っているカメは終生飼い続けるか、やめるなら譲渡か殺処分しかない。
こんなにポピュラーなカメを日本の在来種であるイシガメなどを守るために排除しようとするのである。ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)は今から60年ぐらい前、1960年代に「森永チョコボール」の景品として子供たちにプレゼントするためアメリカからたくさん輸入されたものの子孫である。アメリカザリガニももっと前、昭和初期にアメリカから食用ガエルの餌用として輸入されたものの生き残りである。筆者の子供時代にもアメリカザリガニは田んぼの川にはたくさん繁殖していて、スルメをエサに釣り上げて遊んだものである。両者とも日本の自然には長年根付いている。
外来種はとにかく悪であり、在来種は絶対に守るべきであるというこの発想はどこから来たのか。本書の主張している点は、いま世間に流布している安易な自然観を止め、外来生物と言ってもさまざまであり、もう少し緩やかに細かく観察して自然と向き合おうという提唱である。外来種がかえって自然を豊かにしている側面もある。世界の自然保護思想の中にもこうした考え方は今注目されつつある。
著者の言いたいことは自然愛好家(ナチュラリスト)が誰しも思っている考えである。自然に触れて楽しむということは細部や個別に見ていく目を養うことであり、その楽しみなのだ。テレビの「かいぼり」番組のように「これは外来種」「これは在来種」と分けて「外来種は駆除」と断ずる愚を避けようということなのである。本書は一部過激な自然保護原理主義者たちにはお気に召さないかもしれないが、しごくまっとうな常識で語られた日本の現在の自然保護への提言の書である。
(担当/木谷)