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無駄こそが尊いという、禅の逆説的な知恵

無駄骨を折る
――今日を生きるための禅の言葉
横田南嶺 著
無駄骨を折る

本書は、鎌倉を代表する古刹・円覚寺において、禅僧たちのために語られた「僧堂提唱」という話をはじめ、日ごと綴られた言葉を精撰し一冊にまとめたものです。

著者・横田南嶺老師は、日々の修行と向き合いながら、「今日をいかに生きるか」という問いに、禅の言葉をもって静かに、しかし力強く答えます。

タイトルの「無駄骨を折る」とは、無駄と思える営みこそが修行であるという、禅の逆説的な智恵を表しています。

本書の特徴は、まずその語り口の優しさと深さにあります。難解な禅語録を取り上げながらも、具体的な修行体験や歴史的な逸話を通して、読者の日常に寄り添う視点を決して忘れません。『臨済録』の「無位の真人」や「大悲千手眼」のエピソードを現代の私たちの生き方に引き寄せて、洞察力をもって語ります。

さらに老師は毎日文章を綴り続けており、その姿勢そのものが「無駄骨を折る」行為の尊さを体現しています。坐禅の「楽しさ」や、修行における「共に坐る」ことの大切さ、「今ここ」にある仏性への気づきなど、一つ一つの章が、静かに読む者の心を揺さぶります。

効率や成果が求められがちな現代社会において、こうした価値観を軽やかに乗り越え、「無駄」とされる行為の中にこそ人間の本質が宿るという教えは、深い慰めを与えてくれるでしょう。禅に初めて触れる人にも、長年親しんできた人にも、新たな発見と気づきがある一冊です。

これから進むべき道に悩む若者はもちろん、酸いも甘いも嚙み分けた大人の読者にとっても勇気が湧いてくることでしょう。是非ご高覧ください。

(担当/渡邉)

内容紹介

努力して努力して力を入れて入れて、
それでもどうにもならなくて、
一切を放ち忘れたときに、
天地の気に満たされる――。

鎌倉を代表する古刹・臨済宗円覚寺派管長が日ごと綴る、
「僧堂提唱」「今日の言葉」「今日の出来事」から精撰。
勇気が湧く言葉の数々!

自己を捨て切って、放ち忘れて、天地の気と一つになるのです。
それには、自分の意図や、作為など一切を捨て果てることが必要です。
努力して努力して力を入れて入れて、それでもどうにもならなくて、一切を放ち忘れたときに、天地の気に満たされたとでもいうべきでしょう。(「浩然の気」より)

目次

まえがき
僧堂提唱 「臨済」のいわれ/僧堂提唱 臨済の三句/僧堂提唱 無位の真人/僧堂提唱 雑草を取らぬ/今日の言葉 釈宗演老師の慈愛/今日の言葉 釈宗演老師の慈愛――その二/今日の言葉 たよらないのが仏様?/今日の言葉 碧巌録/今日の言葉 五事を調える/今日の言葉 何をしても仏心/今日の言葉 ダライ・ラマの言葉/今日の言葉 腕組み/今日の言葉 禅の基本/今日の言葉 共に坐る/今日の言葉 やはり、坐るのが楽しい/今日の言葉 平常心/今日の出来事 開山忌/今日の言葉 莫煩悩の語/今日の言葉 祭ること在すが如し/今日の言葉 となふれば仏もわれもなかりけり/今日の出来事 藤田一照さん/今日の言葉 自己を完成させるのが先か、人をすくうのが先か/今日の言葉 夢窓国師の願い/今日の言葉 四つの病/今日の言葉 いよいよ、分からなくなる/今日の出来事 羅漢講式/今日の出来事 舎利講式/僧堂提唱 禅門における観音様/僧堂提唱 大悲千手眼/僧堂提唱 一無位の真人有り/僧堂提唱 人としての尊さ/僧堂提唱 喝/僧堂提唱 払子を立てる/僧堂提唱 嬉しがらせの名人/僧堂提唱 十字街頭/今日の出来事 行住坐臥/今日の出来事 信について/僧堂提唱 途中と家舎/今日の出来事 塩沼大阿闍梨来山/今日の出来事 茶の木には茶の花咲いて/今日の出来事 阿闍梨様のお寺慈眼寺へ/今日の出来事 盤珪禅師の言葉に学ぶ/今日の言葉 難行なしに――盤珪禅師の慈悲/今日の言葉 夢窓国師の教え/今日の言葉 悪人も仏心/今日の言葉 一遍上人の念仏/今日の言葉 仏様の心/今日の言葉 如法/僧堂提唱 僧堂における四料揀/僧堂提唱 生死に染まず/僧堂提唱 去住自由/僧堂提唱 殊勝、自ずから至る/僧堂提唱 人惑を受けざらんことを要す/僧堂提唱 病は不自信の処にあり/僧堂提唱 面前聴法底/僧堂提唱 学人/僧堂提唱 祈るこころ/僧堂提唱 繰り返しの尊さ/僧堂提唱 錦きたるに勝れり/僧堂提唱 愚にかえる/僧堂提唱 無の一字/僧堂提唱 僧堂を出ざること五年/僧堂提唱 この国の風たるや/僧堂提唱 この国の風たるや――その二/僧堂提唱 無駄骨/今日の言葉 長年の習慣/今日の言葉 成道会/今日の言葉 師の命日/今日の出来事 大学講義/今日の言葉 浩然の気/今日の言葉 待つこと/今日の言葉 待つこと――その二/今日の言葉 道、遠からんや/今日の言葉 閑不徹/今日の言葉 痛み/今日の言葉 無用の木/今日の出来事 報恩底/今日の出来事 新年の行事/今日の言葉 大般若転読/今日の出来事 講演始め/今日の言葉 四つの課題/今日の出来事 怨親平等/僧堂提唱 無常/僧堂提唱 三界無安、猶如火宅/僧堂提唱 無分別/僧堂提唱 雪安居講了/僧堂提唱 外に求めないからこそ/今日の言葉 しばしば空し/今日の出来事 知らざる最も親し
あとがき

著者紹介

横田南嶺(よこた・なんれい)
臨済宗円覚寺派管長。花園大学総長。一九六四年、和歌山県生まれ。筑波大学在学中に出家得度し、卒業後に建仁寺で修行。著書に『十牛図に学ぶ 真の自己を尋ねて』『禅と出会う』『はじめての人におくる般若心経』『無門関に学ぶ』など多数。
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