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犬に良い暮らしは、人間にも最高だった!

犬のために山へ移住する
――200万円の小屋からはじまる、不便でも幸せな暮らし
穴澤賢 著
犬のために山へ移住する

■ 愛犬のために都会から山へ。「リアル移住記」

 近年、都市部の夏はかつてないほどの異常な暑さとなり、日中に犬を散歩させることすら難しくなっています。「エアコンの効いた室内に留めておくしかない」という状況に、不安や葛藤を抱える飼い主の方も多いのではないでしょうか。
 著者もまさに同じ悩みを抱え、「犬が快適に過ごせる環境で暮らしたい」という切なる思いから、八ヶ岳への完全移住を決断しました。

■土地300坪で200万円。破格の物件の“現実”

 購入したのは、300坪の土地に建つ築50年の古家。価格はわずか200万円と魅力的でしたが、実際に暮らしてみると、さまざまな課題が次々と明らかになります。
 朽ちて崩壊寸前の階段、敷地に立ち入れないほど伸び放題の雑草、断熱材のまったくない冬は凍えそうな室内、何度も発生する雨漏り、あまりきれいではないトイレとお風呂、古びたキッチン、使い勝手の読みづらい間取り……いわば、難題の連続。
 しかし、山の空気の中を生き生きと走り回る愛犬たちの姿が、前へ進む力を与えてくれたといいます。

■小屋の改修と理想の山暮らし実現への日々

 著者は、地元で知り合った大工さんに助けられ、限られた資金の中で少しずつ家を整えていきます。
 伸び放題だった雑草を刈り、ドッグランを整備、傷んだ床や壁を修繕、冬に備えての断熱対策、薪割り、自分たちの暮らしに合うように書斎やサンルーム、パントリーを増築、お風呂とトイレ、キッチンの改修……。こうした作業をひとつずつ積み重ね、約5年の歳月をかけて“理想の山暮らし”を形にしていく過程が、写真とともに丁寧に描かれています。

■ 移住のメリットと現実を、両面から記録

 本書は、移住生活の魅力だけでなく、田舎で実際に暮らして初めてわかる“難しさ”についても率直に記されています。こうした情報は、これから移住を検討する方にとっても貴重な判断材料となるでしょう。
 何より、犬との幸せな暮らしを本気で実現したい人にとって、実用書としても読み物としても価値ある一冊となっています。ぜひ多くの方に読んでいただければ幸いです。

(担当/吉田)

目次より

第 1 章 犬のために山に家を買う――謎の間取りのボロ小屋との運命の出会い
なぜ八ヶ岳を選んだのか/圧倒的に別荘地がおすすめ/山に惹かれるようになったわけ/ 山への思いが復活するまで/物件探しに動き出す

第 2 章 山暮らしのリアル――なんとかなること、なんともならないこと
山は世間と切り離されているか/安い物件には必ず安い理由がある/2拠点生活を経て移住した経緯/山の暮らしは、車がないと始まらない/完全移住の最終決断/大福はいつ移住したことに気がつくか/家がなかなか売れない! 住宅ローンからの解放

第 3 章 山の家のリフォームの全貌――お金がないなら時間をかけるしかない
手始めはプライベートドッグラン/全体のリフォーム開始/ドラムセットのある4畳半の仕事部屋/テラスの一部にサンルームを作る/至福のひと時、テラスで炭火焼鳥大福/ついに! お風呂とトイレとキッチンのリフォーム/憧れの薪ストーブ導入/かかる費用の正直な話

第 4 章 やっぱり山で暮らしてよかった――人と犬はどう変わったか
標高 1 4 5 0 mの四季/山の暮らしはスローライフではない/富士丸から学んだことと山の動物病院事情/突如、登山に目覚める/都会が恋しくなったときには……

第 5 章 犬のしあわせは自分のしあわせ――犬中心に生きる
老後の心配と理想の死に方/移住して一番変わったことは何か/犬との時間を考える

著者紹介

穴澤賢(あなざわ・まさる)
1971年大阪生まれ。八ヶ岳在住のライター兼編集者。2015年、長年犬と暮らした経験から主に犬グッズを扱うブランド「DeLoreans」を立ち上げる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、『またね、富士丸。』(集英社文庫)、『Another side of music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、『明日もいっしょにおきようね』(草思社)、『富士丸おでかけ日和』(日経BP)、『また、犬と暮らして。』『犬の笑顔が見たいから』(いずれも世界文化社)、『富士丸のモフモフ健康相談室』(共著者藤田紘一郎、実業之日本社)などがある。
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