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「崩壊の現場」から人類の現在と未来を考察する知的刺激に満ちたルポルタージュ!

かつて世界の中心だったヨーロッパは、二十世紀を通して大小の戦争と先鋭的なイデオロギー対立、民族紛争の舞台となり、数えきれないほどの「廃墟」を残すことになりました。本書『廃墟のヨーロッパ』は、長年、新聞社の記者として欧州各地で取材や調査に携わり、現在は研究者としてさらに考察を深めている著者が、ヨーロッパ各地の廃墟とそこに生きる人々の姿を通して、これまで顧みられることのなかった「記憶」と「時間」の層を掘り起こす文明論的なルポルタージュです。
本書で取り上げられている廃墟の形態はさまざまです。チェルノブイリ原発事故で無人となった街、ロンドンの地下に眠る核シェルター、戦後朽ち果てたピレネー山中の乗換駅、南イタリアの産業振興策の残骸、分断に苦悩し権威主義勢力の揺り戻しに脅かされる東欧の各地、EU離脱を支持した英国のラストベルトやルペン躍進の土壌となったフランスのラストベルト、そしてナチスの強制収容所跡……。本書の冒頭で著者は、「はじめから廃墟を意識して現地を訪ねたわけではない。その時々に焦点となった出来事やニュースの現場に足を運び、ふと振り返ると、その多くがある種の廃墟だったと気づいた」と書いています。現代を深く理解しようとすれば、廃墟に目を向ける必要があるのです。
そして、社会的な分断や対立、人口減少と移民問題……といった本書が扱っているテーマは、日本人にとっても今やまったく他人事ではありません。本書が浮き彫りにするヨーロッパの苦悩が、日本が置かれた状況を考えるための糧になることを願ってやみません。
(担当/碇)
目次
はじめに
第1章 よみがえるソ連――プリピャチ
■「ウクライナでもっとも快適な道路になりました」
■再現されたソ連の生活風景
■想像力を呼び戻す仕掛け
■「一時的に、三日間だけ避難せよ」
■帰還者の行方
第2章 足元に潜む核戦争――ロンドン
■米ソの「ホットライン」も経由
■核シェルターは政府関係者専用
■戦略の要として復権しつつある核兵器
第3章 分断された世界――ボスニア・ヘルツェゴビナ
■「互いに撃ち合った過去」の呪縛
■「首都で私はトイレに行かない」
■利権を差配する「お山の大将」
■狭い行政区に大臣が十五人
■聖火台のマクドナルド
■「EUのレベルに達するには百年かかる」
第4章 名君だった「暴君ネロ」――ローマ、ポンペイ
■ポピュリスト政治家としての皇帝ネロ
■ポンペイ落書きが語る意外な人物像
■フェイクニュースが歴史になるとき
■タイムカプセルとしてのポンペイ遺跡
■歴史は発見とナラティブのせめぎ合いでつくられる
第5章 人影が消えた浜辺――キプロス
■閉ざされた「地中海の宝石」
■「住民の間には、もはや何の対立もありません」
■三種類の旅券を保有する住民たち
■キプロス問題を左右するエルドアンの思惑
■三つのシナリオ
■トルコによる北キプロス併合という悪夢
第6章 峠を越えた金塊――ピレネー山脈・カンフラン国際駅
■ナチスの金塊が運び込まれた国境の駅
■線路上に散らばっていた古い書類
■中立国スペインの複雑な立場
■金塊の用途と行き先
■古びた窓枠から歴史を振り返る
第7章 地中海の中心で、地図を描く――南イタリア・カラブリア
■頓挫した開発とマフィア、発がん性物質
■人口二百万人の州に四百万人分の住宅
■辺境が地中海の中心になる日
第8章 アウシュヴィッツの東を見よ――ソビブル、トレブリンカ、ベウジェツ
■ソ連によって整えられた虐殺の条件
■ホロコーストを物質的な面から分析する
■なぜアウシュヴィッツが象徴となったのか
■ソビブルの名札
■有刺鉄線を越えて
■立ち尽くす一万七千の石
■「青い壁」の秘密
■演出はどこまで必要か
■政治によって封印された記憶
■絶滅収容所映画が意図するもの
第9章 虹の彼方に消えた「移民」――ウェスト・ヨークシャー
■半世紀にわたる衰退の歴史
■なぜアジア系住民はEU離脱に賛同したのか
■スケープゴートにされた「ポーランド移民」
■「レフト・ビハインド」の虚実
■「ブレグジット」から「ブレグレット」へ
第10章 かつてこの国に王がいた――ソフィア
■国王から亡命者、そして首相に
■廃屋がブルガリアの共通の風景
■若者が夏休みにだけ帰ってくる国
■新興大国の草刈り場
■ガラパゴス化するEUの政治モデル
■ポピュリストが語る「心温まる社会」
■「世界の終わり」と「月末までの生活」
■EUの存在意義はどこにあるのか
第11章 ボタ山が育んだ政治勢力――ノール・パドカレー炭田
■平屋の美術館「ルーブル分館」
■多様な人々によって育まれた豊かさ
■マリーヌ・ルペンの拠点となったボタ山の街
■「欲しいのは、援助やカネじゃない」
■利用される「不平等感」と「承認欲求」
■「トランプなんて、まだましだった」
第12章 ナンバープレートの上の「国家」――コソボ・ミトロヴィツァ
■国境でのばかげた「義務」
■政府によって煽られる住民対立
■コソボ政府の行政能力にも不信感
■「プーチンは嘘つきの常習犯です」
■セルビアとコソボに共通する自己認識
第13章 共産主義の亡霊が徘徊する――ブダペスト
■「恐怖の館」の政治性
■目指すのは「非リベラルな社会」
■「外国をコピーするだけではだめだ」
■イデオロギーからアイデンティティーへ
■「オルバンの手法はスズキの工場と同じ」
■「三十年前とあまり変わっていない」
■富裕層と貧困層の結託
■「総統民主主義」が審判を受ける日
第14章 壁なき大平原の幻想――ベルリン
■消滅したはずの「壁」が再び立ちふさがる
■「欧州の病人」から「一人勝ち」へ
■「接近による変化」の理想と現実
■メルケル政権の「功」と「罪」
■「相互依存は安定には結びつかなかった」
破壊と再生――結びにかえて
