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二千年を超えて、いま読むべき『荘子』

真説 荘子
――古代中国の賢者が説いた絶対的幸福論
高橋健太郎 著
真説 荘子

『荘子』が説く、不幸が存在しない「幸福の世界」

「どうすれば幸せになれるのか」
この問いは、時代や国を問わず、人間が繰り返し向き合ってきたテーマです。成功すれば幸せになれるのか。努力すれば報われるのか。現代では、その答えがSNSや自己啓発書、ビジネス書として無数に提示されています。
しかし、二千年以上前の中国に生きた思想家・荘子は、そうした問いにまったく異なる角度から向き合っていました。
哲学書『荘子』は、しばしば難解で、現実離れした思想書だと思われがちです。しかし本来の荘子は、「現実をどう生きるか」という、きわめて切実で実践的な問題を扱った書物でした。本書が読み解くのは、荘子が説いた〈絶対的な幸福論〉です。

現代人が陥る「不幸の罠」の正体

荘子が問題にしたのは、「幸福」と「不幸」を対立させて考える私たちの思考そのものです。幸福を求めれば求めるほど、かえって不幸への不安が生まれ、他者との比較や競争に巻き込まれていきます。その構造自体が、人を苦しめているのではないか——荘子はそう見抜いていました。
本書では、寓話や対話に満ちた一見抽象的な『荘子』の言葉を、現代の感覚に照らして、細かく読み解きながら、「不幸を前提としない幸福」とは何かを明らかにしていきます。努力や成功を否定するのではなく、それらに縛られずに生きるための視点が、見つかるはずです。
現実というものは、基本的には思い通りにならないものです。しかし、だからこそ、どう生きるかが問われます。
『荘子』は、二千年を経た今もなお、その問いに確かに答え続けているのです。 ぜひ多くの方に手に取っていただければ幸いです。

(担当/吉田)

目次

1章 『荘子』という古典
1-1 荘子とは誰か?
荘周の生涯/戦国時代の庶民/権力者の悲惨な最期/誰もが翻弄されるこの世界で

1-2 言葉にできないものを言葉にした「まともでない」書物
『荘子』のプロフィール/「寓言」とは何か?/「まともでない世界」の思想/人の「いいね」が自分の幸福なのか?/自分自身の「いいね」を手にするために

1-3 『荘子』の絶対的幸福論 ――「一」に従って生きる
道家思想とは何か?/諸子百家について/「二」に分かれた世界で/『荘子』の方法論

2章 「風」の音を聞け ――『荘子』の説く理想の生き方
2-1 幸福とは何か?
「不幸」の元凶/『荘子』の語る幸福/「天」は目の前にある/天地を以て春秋と為す

2-2 「風」の音を聞け
「天」と「人」/「人籟」を聞く境地とは何か?/「地籟」を聞く境地とは何か?/「天籟」を聞く境地とは何か?/「地籟」は「二」の世界で鳴っている/『荘子』の矛盾

2-3 「思い通りにならない世界」について ――「命」とは何か?
風は物事の連続として吹く/「命」は分からない/現実は不確実/人の行いに意味はないのか?
補説 イーロン・マスクを例に

3章 世界の真相 ――「言葉」という元凶
3-1 世界は言葉でとらえられない
感情はどこから来るか?/「胡蝶の夢」/「物化」という錯覚/「大覚」とは何か?

3-2 言葉という元凶
言葉の性質① ――「言葉は正しく世界を言い表さない」/言葉の性質② ――言葉は増殖する/「無」から「有」への言葉の増殖/「有」から「有」への言葉の増殖

3-3 議論が人間を不幸にする
議論では「正しさ」に近づけない/議論の勝敗は判断できない/「二」はお互いの言葉を台無しにする

3-4 人は誰も「議論」を理解していない
「議論をすれば正しさに近づく」という信仰/議論の積み重ねが言葉の意味を見失わせる/人は結論を信じているだけ/「道」が隠れ、「議論」が生まれた

3-5 世界を「両行」で見よ
朝三暮四/意味の相対的な決定/「道枢」をとらえる/「両行」は言語化された聖人の心  /「両行」では身動きが取れない?

4章 「内なる何か」を目覚めさせる
4-1 庖丁、牛を割く
「命」の二重構/庖丁の説く生き方の極意/「命」に相対する/上達とは対象が意識から消えていく過程/「遊」とは何か?/刀は人間

4-2 「内なる何か」を目覚めさせよ
無我夢中の境地/わざとの意識が「内なる何か」を妨げる

4-3 知恵とモチベーションが台無しにする
極限の課題設定/知恵と名誉欲/「二」の意識が現実との摩擦を生む

4-4 「虚」になるために ――顔回の答え
顔回の暴君攻略法① ――「端にして虚、勉めて一」/顔回の暴君攻略法② ――「内直、外曲、上比」/「心斎」とは何か?/『荘子』の説く「空虚」の境地

4-5 「忘」とは何か?
「坐忘」へのステップ/「忘」とは何か?/「内なる何か」は「その先にあるもの」への意識を開く/「坐忘」への三段階とは何か?

4-6 「内なる何か」を目覚めさせる方法
南伯子葵と女偊の問答/「内なる何か」を目覚めさせるために/『荘子』の理想の生き方
付録 孔子・顔回「心斎」問答全文

5章 「一」と「二」を往復する
5-1 「二」の世界は「一」の世界である
「一」はどこにあるのか?/「一」に対して違った表現があるということ/「二」の世界とは「一」の世界である/「道」は「一」と「二」を往復する/ではどう生きるか?

5-2 「一」と「二」を往復して生きる
庖丁もまた「二」の意識を使っている/「機械」と「機心」/「機械」もまたよし/「一」と「二」の間を往復する

5-3 「遊」について
「遊」の真の意味/「天の筋道」を「遊」ぶ/最後に残った二つの疑問/「絶対的な幸福」で感じる幸福感とは?/すでに変わった「二」の世界

著者紹介

高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
作家。横浜市生まれ。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。国文学専攻。専門は漢文学。古典や名著を題材にとり、独自の視点で研究・執筆活動を続ける。近年の関心は、幸福論、謀略術、弁論術や古典に含まれる自己啓発性について。著書に『真説 老子』『鬼谷子』『鬼谷子 全訳注』(いずれも草思社)、『どんな人も思い通りに動かせるアリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、『言葉を「武器」にする技術――ローマの賢者キケローが教える説得術』(文響社)、『哲学ch』(柏書房)など多数。
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