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なぜあのような最期を遂げたのか

一九七〇年十一月二十五日、市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部バルコニーで自衛隊の蹶起を促す演説をした後、割腹自決した三島由紀夫。
その死は荒唐無稽な「事件」として片付けられがちだが、彼が最晩年に語った「このままでは日本はからっぽな経済大国になる」という予言は、半世紀後の私たちの現実に重く響く。戦後の繁栄の影に漂う空虚、伝統の喪失、精神的支柱の衰弱――三島はそれらを鋭く見抜き、文学と行動で警鐘を鳴らした。
本書は、その予言の意味と射程を、戦後日本の歩みと重ねて読み解く試みである。司馬遼太郎や江藤淳ら同時代の知識人による評価、乃木希典やガブリエレ・ダンヌンツィオとの比較、そして『金閣寺』『午後の曳航』など主要作品に潜む思想的伏線をたどりながら、三島という作家の「迷宮」を探る。
自決の衝撃だけでなく、その背後にあった美と死、行動と思想の緊張関係を描き出すことで、なぜ彼の言葉が今なお生々しく響くのかを明らかにする。三島が命を懸けて提示した問いは、過去のものではない。
著者は日本経済新聞社において文化部長や論説委員を歴任。若き日に三島由紀夫の自決当日、市ヶ谷駐屯地で現場取材を行い、さらに江藤淳から直接談話を得た経験を持つ。本作で「草思社文芸社大賞2024」大賞受賞。
三島生誕百年の今こそ、三島由紀夫の言葉の魅力を解き明かした本書を是非ご高覧ください。
(担当/渡邉)
内容紹介
なぜあのような最期を遂げたのか――。
「からっぽな大国」化する日本に蹶起した
三島の内的動機を多面的に読み解く。
一九七〇年十一月二十五日、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地を取材し、
近くに住む江藤淳の談話をとった元新聞記者の著者が、
激動する昭和に生き、自決に至った三島の内的動機を、
初期から晩年までの作品世界を緻密に読み解きながら明かす。
「草思社文芸社大賞2024」大賞受賞作。
目次
プロローグ 海と〈乃木神話〉
第一章 ダンヌンツィオに恋をして
第二章 「太宰さんの文学は嫌いです」
第三章 アルカディアは何処に
第四章 金閣炎上と〈肉体改造〉
第五章 〈白亜の邸宅〉の迷宮へ
第六章 雪の朝、銃声響く
第七章 「この庭には何もない」
第八章 〈英雄〉と蹶起
第九章 無機的で、からっぽな大国
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