話題の本
話題の本一覧
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筋トレはアスリートのためのものではなく、すべての人に必要な《生活習慣》です!

この本は「筋肉博士」の愛称で親しまれた故・石井直方東京大学名誉教授が、長年の研究と自身の実践をもとに、中高年以降のための「生活に役に立つ筋トレ法」をまとめた最後のメッセージともいえる一冊です。
本書の冒頭で著者は平均寿命と健康寿命の間にある12年ものギャップに着目し、その差を縮める鍵が「筋肉」にあると説いています。医療技術や生活環境の向上によって日本人の平均寿命は大きく延びましたが、そのぶん健康寿命との乖離も大きくなっていて、男性で約9年、女性では約12年ものギャップがあります。そして要介護の原因の多くが加齢による筋肉量と筋力の低下なのです。
本書のなかで著者は「生活筋力」という概念を提示して、日常生活を自立して送るために必要な筋力を維持することの重要性を説いていますが、興味深いのは筋力を維持することで得られるメリットはそれだけではないということです。認知症予防や糖尿病リスクの低減、がんとの闘病にも筋力が関係することを、著者は豊富なデータと自身の経験にもとづいて明らかにしています。
このようにシニア世代にこそ大きなメリットがある筋トレですが、実際にはじめるとなると二の足を踏んでしまうという読者のために、本書では「軽い負荷でも効果がある」「関節に優しい方法がある」「週2回からでもOK」ときわめて現実的なアプローチを紹介し、シニアが筋トレを始める際の不安や誤解を解消していきます。加えて、筋トレを続けるためのコツ(歯磨きとのセットにすることによる日課化など)も紹介されており、すでに筋力トレーニングになじみのある読者にも役に立つ内容となっています。
2040年には社会保障費が190兆円に達する見込みの日本において、シニア層が「健康寿命を伸ばす」ことは大きな社会的課題でもあります。本書はそうした課題に対する処方箋にもなりうる一冊といえそうです。
(担当/碇)
目次
まえがき 谷本道哉
第一章 平均寿命まで維持したい「生活筋力」
健康寿命から考える「生活筋力」の必要性
実年齢と体力年齢との乖離
足腰筋力が体重の2・5倍を下回らないように
足腰年齢を推定する簡易テスト
筋肉を使う機会が次々に減っていく……
+10(プラス・テン)「今より10分多くからだを動かそう」
人は何歳まで生きられるのか?
筋肉の維持が健康の基盤となる理由
筋肉がトレンドの時代に
筋肉率に注目!
第二章 生活筋力を向上させよう!
筋力が衰えたと実感するサイン
呼吸循環器系の衰えにも注意
知らず知らずのうちに衰えている脚筋力
筋トレは認知症予防にも効く!?
がん予防の効果も!?
入院中も欠かさなかった筋トレ
筋トレ継続のコツ
高齢者に“標準”は適用しない
高齢者の筋力強化に最適のスロトレ
膝への負担は工夫次第で解消できる
筋肉の質の良し悪しはどこで決まるのか?
筋肉は使わなければ弱っていく
ウォーキングだけは足腰の筋力強化には不十分
エネルギー代謝の観点から有酸素運動の役割を知る
筋トレ(スロトレ)を勧めたい理由
第三章 生活筋力の土台をつくるスロースクワットの理論と実践
日常生活に欠かすことのできない「しゃがむ⇔立ち上がる」
注目すべきは、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)
スクワットはキング・オブ・エクササイズ
スロースクワットの実際
続・筋トレ継続のコツ
エア・バイシクル・ツイスト
グッドモーニング&シングルレッグデッドリフト
ランジ
壁を利用したプッシュアップ
第四章 筋トレが習慣になれば老後はより快適になる!
階段を利用したトレーニング
ふくらはぎの健康状態にも配慮しよう
筋力の「剛」、関節の「柔」―どちらも大事!
筋肉痛は筋力アップの証し
フレイルからの脱却に向けて
運動指導者の役割
石井直方流の食事法
筋肉と筋肥大の基本的なメカニズム
低負荷強度トレーニングは効果がないのか?
低負荷でゆっくり動作する「スロトレ」は効果的
適切なセット数と頻度にはリボソーム量が関わる?
あとがき――追憶
岡田隆
佐々木一茂
高西文利
石井久美子