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精神的な悩みに直面することでアスリートは大きく成長する!

この本はスポーツ心理学の最前線で活躍中の研究者が、アスリートのさまざまな「こころ」の揺れと、そこから起こる困難な状況への対処法をわかりやすく解き明かした一冊です。著者は現在、大阪体育大学教授として研究・教育活動に従事するかたわら、プロスポーツチームなどでも幅広く指導をおこなっており、昨年のパリ五輪には日本オリンピック委員会科学サポート部門員&アントラージュ部門員として選手団に参加しています。
緊張(あがり)とどう向き合うか? 不安感におそわれたら? 必要なイメージトレーニングとはどのようなものか? ……といった具体的なアスリートの悩みに著者がどのように対応し、その結果どうなったか、本書では著者が実際に経験した事例をベースに書かれています。お読みいただければ、アスリートが精神面の悩みに直面することは成長の機会でもあるのだということがご理解いただけるかと思います。またたとえば、「緊張=悪」としてそれを抑えつけるのではなく、緊張する場面でも(むしろ高い緊張状態だからこそ)、実力を発揮できるスキルを身に付けることを目指す、といった本書で提示されている方法論は、アスリートだけでなく多くの社会人・学生にとっても役に立つのではないでしょうか。
私たちの「こころ」をめぐる問題は、フィジカルなトラブルにくらべるとその捉え方も十人十色ではありますが、多様性が前提になるからこそ基本となる考え方を理解しておくことが大切になるわけです。本書がアスリート・トレーナーをはじめとする多くの読者にとって有益な書となることを祈ってやみません。
(担当/碇)
本書より
〈自分はメンタルが「弱い」と考えているアスリートは相対的に多く、
「人並だ、普通だ」と答えるアスリートよりも多いという特徴があります。
……いずれにせよアスリートの場合、メンタルが弱いというのは
ネガティブな意味合いではなく、心理面にさらに伸びしろ(成長の余地)がある
と考えて対応するのがよいと考えられます〉
〈フィジカル面は客観的な把握が可能である一方で、単に測定するだけではトレーニング効果を見込めません。しかし心理面に関しては測定を通じて自己理解を深めることで、それがメンタル面の強化につながるといった特徴を指摘することができるかもしれません。そのためにも、アスリートの話を傾聴し、アスリートとの共同作業を通じて、彼らが自己発見的に競技生活を送り、全うできるよう支援することが重要と思われます。〉
〈心理学では、やる気を動機づけの視点から科学的に分析することが可能です。やる気は気分に属するもので変わりやすいものです。例えば指導者の鼓舞で一時的に選手がやる気になったとしても、次の日に嫌なことがあればやる気はなくなってしまうかもしれません。一方、動機づけは行動を支える理由や根拠であり、動機づけが明確になれば、どんなときでも行動は喚起され、強化され、維持されます。極論すれば、やる気がなくても動機づけがはっきりしていれば行動は不変です。〉
目次
第1章 メンタルトレーニング事始め
第2章 自己への気づきを深めるアセスメント
第3章 行動変容のための目標設定
第4章 あがりの予防と対処法
第5章 リラクセーションのすすめ
第6章 心と身体をつなぐイメージトレーニング
第7章 ピークパフォーマンス時の心理的世界
第8章 絆を深めるチームビルディング
第9章 メンタルリハーサル:試合に向けた心理的準備
第10章 ストレスマネジメントと心の成長
第11章 ソーシャルサポートの活用:競技環境の最適化のために
第12章 アスリートのメンタルヘルスとウェルビーイング
第13章 グッドコーチになるための心理サポート
第14章 プレーヤーの主体性を育む振り返り
第15章 メンタルトレーニングのこれまでとこれから:学び続けることの大切さ
