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いつか来る最愛のペットとの別れを、真正面から考えてみる

コロナ禍による巣ごもりの拡大でペットを飼う人が増えていることを「ペットノミクス」と呼ぶそうです。動物とかけがえのない時間を過ごす人が増えているのはとても素晴らしいことです。しかし、避けては通れない瞬間が、いつの日か必ず訪れます。最良の友人であるペットの最後に、私たちはどう向き合うべきでしょうか。
また、動物たち自身は、死について何かを知っているのでしょうか。本書は、動物たち自身あるいは飼い主の「死」の認識について考え、そのうえで、私たちがどう彼らの最後に向き合うことができるかを考える、動物との絆についての書です。
命が尽きる直前に独特な表情でこちらをみつめる犬、飼い主の前から姿を消した死期の近い猫など、動物が自身の死を悟ったかのように特定の行動をとることは多く確認されています。また、オスカーという病院で飼われていた猫は、死期が近い患者を正確に見分けられたといいます。これらは、動物たちが何らかの形で死をとらえる能力がある可能性を示しています。そうであるならば、死に対して動物が抱きうる感情に寄り添って行動することが、飼い主として彼ら彼女らにできる最良のことなのかもしれません。
彼らの最後の瞬間を見続けるのはつらいという人も多くいます。しかし、彼らが最後の最後まで一緒にいてほしいと思っている可能性があるのなら、できるかぎりその時まで一緒にいてあげたほうが良いというのが著者の基本的な主張です。ですが、あくまでも最後の決断に正解というものはありません。自分自身の納得のいくように見送り、悲しみ、悼むことで、私たちが深い感情を味わうことができればよいのです。それは、動物たちが、私たちをより人間らしくしてくれた証だといえます。
その他にも、子どもに正直に現実を伝えるべきなのか、自分よりも早く逝ってしまうことについてどう考えるべきなのかなど、飼い主を悩ませる様々な問題に対して、本書は解決のための糸口となるような話題をたくさん提供しています。
この難しい課題に向き合ったのは、『ゾウがすすり泣く時』で一躍動物の心に関する大家となったジェフリー・M・マッソン氏です。犬を中心に動物たちの感情について多くの書を世に送り出したジェフリー氏の、集大成ともいえる作品です。
本書が、ペットを飼っている方はもちろんのこと、動物と人間の心のつながりについて興味がある多くの方に手に取っていただければ幸いです。
(担当/吉田)
