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小津だけじゃない昭和の日本映画の面白さ

「小津安二郎に憑かれた男」の映画案内
――田中眞澄・映画コラム傑作選
田中眞澄 著 平山周吉 編
「小津安二郎に憑かれた男」の映画案内

 厖大な小津安二郎の日記や発言集・資料を生涯かかってまとめた在野の研究家、故・田中眞澄氏は小津映画だけに詳しいわけではない!
 氏の「小津以外の日本映画」エッセイを主に、昭和の日本映画全般の楽しみ方をつづった評論・コラムを集めたエッセイ集。編者は『小津安二郎』(新潮社)で2023年度の大佛次郎賞をとった、生前の著者をよく知る平山周吉氏。女優・男優案内から、監督論・名作紹介まで、豊富な知識・深い日本映画研究から語られる日本映画ガイドは、他では味わえないディープな面白さに満ちている。
 氏の小津安二郎研究は岩波書店やみすず書房、フィルムアート社などでほぼすでに刊行されているが、小津安二郎を研究する過程で知った他の日本映画についての広範な知識はまだ十分に披瀝・刊行されていない(雑文などとして埋もれている)。本書は「小津以外の日本映画評論」としては氏の初めての本である。この「在野の怪人」の全貌はまだはっきりしない。資料の中に埋もれて死んだ彼を最期まで知る編者が彼の知識を惜しんで編集した本。
 実は日本映画は世界水準の中でも相当高いレベルまで到達していた。小津以外に清水宏や成瀬巳喜男や溝口健二などなど。田中眞澄氏の案内でその深奥への旅を味わおう!

著者紹介

田中眞澄(たなか・まさすみ)
昭和二十一年(1946)〜平成二十三年(2011)。北海道釧路市生まれ。映画史家・文化史家 。慶應義塾大学大学院国文科修士課程修了。その後、国会図書館に自らを十五年以上幽閉し、小津安二郎をはじめとする映画史の資料、雑報を徹底的に収集する。主な編著に『全日記 小津安二郎』(フィルムアート社)、『小津安二郎・全発言一九三三−一九四五』(泰流社)、『小津安二郎戦後語錄集成』(フィルムアート社)、著書に『小津安二郎周游』(文藝春秋、岩波現代文庫)、『小津安二郎のほうへ——モダニズム映画史論』(みすず書房)など。現在の小津安二郎ブームの「縁の下の力持ち」に徹した。

編者紹介

平山周吉(ひらやま・しゅうきち)
昭和二十七年(1952)東京都生まれ。雑文家。全国小津安二郎ネットワーク会員。昭和五十年(1975)慶応義塾大学文学部国文科卒。長らく雑誌、書籍の編集に携わってきた。昭和史と日本映画に関する資料、回想、雑本の類を収集して雑読、積ん読している。著書に『江藤淳は甦える』(新潮社、小林秀雄賞)、『満洲国グランドホテル』(芸術新聞社、司馬遼太郎賞)、『小津安二郎』(新潮社、大佛次郎賞)などがある。最新刊に『天皇機関説タイフーン』(講談社)。
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