草思社

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遊牧民族がグローバル世界の基盤を創った!

大草原の帝国(上)
――ユーラシアステップの遊牧民族4500年史
ケネス・W・ハール 著 水野克彦 訳
大草原の帝国(上)
大草原の帝国(下)
――ユーラシアステップの遊牧民族4500年史
ケネス・W・ハール 著 水野克彦 訳
大草原の帝国(下)

ユーラシアステップ地帯の4500年にわたる抗争と融和の歴史

 ユーラシア大陸の中央にひろがる広大な草原地帯。その地に生きた最初期の遊牧民族から、無敵の弓騎兵軍団を率いて帝国を作り上げた最後の征服者、破壊王ティムールまでの4500年を俯瞰する。
 本書が描くのは、大草原地帯という限られた地域の歴史ではない。そこに生きた遊牧民たちが、いかに現代につながる世界の基盤を形づくり、歴史の流れに大いなる影響をもたらしたのか。定住文明による歴史像とは異なり、遊牧民はむしろ世界の中心にあって壮大な歴史を動かしてきた存在だった。

東西の文明を結ぶ巨大な「回廊」

 紀元前、馬を家畜化し広大な草原を駆けめぐった遊牧民族は、定住型の都市文明と対立しながら交流を深めて発展する。その発展を支えたのが東西交易路シルクロードの興隆であり、地球に生まれた初のグローバル経済だった。
 スキタイ、匈奴、フン族——彼らは馬と弓で征服を繰り返しただけでなく、インド・中国・中東・ヨーロッパを結ぶ巨大な「回廊」として世界史のダイナミズムを支えた存在だったといえる。東の中華帝国、西のローマ帝国との狭間で、遊牧民族は抗争を繰り返しながら帝国を形成。5世紀半ば、フン族の征服王アッティラが出現し、無敵の騎馬軍団を率いてローマを脅かす。

モンゴル帝国――制度・宗教・交易を通じて文明を結び直す

 13世紀にはモンゴルの英雄チンギス・ハーンが登場。卓越した軍事指導力と統治理念で世界帝国を築き、草原の遊牧民はその歴史の頂点を迎える。広域な征服と支配を実現し、ユーラシア全土に革命的な変化をもたらした彼らは、たんなる征服者ではなく、制度・宗教・交易を通じて異なる文明を結び直す担い手でもあった。

近現代世界の基盤となった歴史のダイナミズムを築きあげた

 中央アジアからはモンゴル帝国の後継を自任する破壊王ティムールが現れ、都市を破壊し住民を虐殺するがその死後、遊牧民帝国は衰退し、銃火器の出現による軍事革命で騎馬軍団による征服時代の終焉を迎えることになる。
 やがて大航海時代の到来で、内陸のグローバル経済は海洋ルートによる近現代のグローバル経済へと発展していったが、その基盤となったダイナミックな交流を築きあげたのが大草原の遊牧民たちだったのである。
 定住文明を中心とする従来の世界史観を根底から揺さぶる瞠目の書である。

(担当/藤田)

本書目次(上巻)

プロローグ ローマに向かって進軍するアッティラ
アッティラの野望と挫折/蛮族の征服者たち

第1章 ユーラシアステップ地帯に住む人々
タリム・ミイラの発見/インド・ヨーロッパ語族の起源/インド・ヨーロッパ語を話す遊牧民たち/ステップ地帯が巨大な回廊に

第2章 ユーラシアステップ地帯で生き抜く?
シルクロード交易が遊牧民の生活を変えた/無窮の蒼天と無限に続く草原/戦闘に革命を起こした遊牧民

第3章 スキタイ人とペルシャ帝国ダレイオス大王
ペルシャ大王キュロスとダレイオスの敗北/遊牧民スキタイ人の埋葬の儀式/第二スキタイ人のサルマティア人とローマ帝国の同盟関係

第4章 「穢れた民族」を封じこめたアレクサンドロス大王の伝説
アレクサンドロスの罠/地球に生まれた初のグローバル経済/死後一五〇〇年にわたるアレクサンドロスの伝説

第5章 匈奴の冒頓単于と万里の長城
始皇帝が着手した万里の長城の建設/ステップ地帯を統一した冒頓単于/漢と匈奴が結んだ和親条約

第6章 匈奴と漢の長い戦争
汗血馬をめぐる武帝の天馬戦争/国家社会主義を初めて提唱した皇帝王莽/ローマ帝国に向かった漢王朝の使者

第7章 クシャーナ朝の仏教庇護とシルクロードの興隆
仏教を世界宗教へと転換させたカニシカ一世/シルクロード交易の税収で繁栄したクシャーナ朝

第8章 パルティアとローマの戦争は中東地政学の外形を作った
パルティア王国を官僚制帝国に構築したミトリダテス二世/最強のトラヤヌス帝/ローマの中東侵攻に対抗したパルティア人

第9章 匈奴後裔の中華帝国、北魏
仏教を保護した北魏の文成帝/動乱の三国時代と五胡十六国時代/遊牧民起源を持つ北魏と柔然可汗の戦い/遊牧民族と漢民族のバランスを取った北魏の統治

第10章 イランの白いフン、エフタル
エフタルの捕虜となったペルシャのシャーの身代金/敵から同盟へと立場変更を繰り返すエフタル/サーサーン朝は一〇〇年間エフタルの脅威にさらされた/ペルシャとテュルク(突厥)が協同してエフタル帝国を打倒

第11章 ローマ世界とゲルマン民族を翻弄するフン族
騎馬民族フン族の襲来/フン族の侵入を阻むコンスタンティノープルの城壁/フン族の巨大な連合体

第12章 神の災い、アッティラ
東ローマ帝国を蹂躙するフン族の王者/アッティラと西ローマ帝国軍の死闘/ローマ世界の運命を決めたアッティラ

第13章 東ローマ帝国に押し寄せるテュルク系遊牧民の波
コンスタンティノープルを包囲したアヴァール族/新たな強国カリフ国/ユダヤ教に改宗したハザールのカガン/ビザンティン帝国の歴代皇帝の外交術

本書目次(下巻)

第14章 突厥、ウイグルと唐
無類の強さを誇る突厥の弓騎兵/世界最強の君主太宗と中華史上唯一の女帝武則天/第二突厥カガン国とウイグル族による第三のカガン国樹立/シルクロード商人たちが信仰していたマニ教

第15章 テュルク民族とカリフ国
ウマイヤ朝カリフの世界帝国/新たなカリフのアッバース朝と唐軍の激突/イスラム教に改宗したテュルク系遊牧民

第16章 セルジューク・スルタン国
ビザンティン帝国軍の敗北/ガズナ朝スルタンの軍を撃破したセルジューク・テュルク軍/アナトリアを支配したセルジューク朝/イスラムに改宗したアナトリアのキリスト教徒/歴史の行方を変えたマンジケルトの戦い

第17章 プレスター・ジョン伝説とカラ・キタイ
十字軍の失敗でプレスター・ジョンの再来を祈るキリスト教世界/契丹の遼王朝/セルジューク軍を撃破したカラ・キタイ軍

第18章 チンギス・ハーンの登場
第二夫人の息子、テムジン/ユーラシアステップ地帯東部の統一を果たしたチンギス・ハーン/出身部族や民族に関係なくモンゴル帝国民として登用

第19章 チンギス・ハーンの世界帝国
統制の取れた無敵のモンゴル帝国軍/金朝の首都、中都の破壊と虐殺/カラ・キタイのグル・ハーン、クチュルクとの最終決戦/跡形もなく破壊され呪いをかけられたバーミヤンの町/チンギス・ハーンの西征はイスラム世界の境界線を変えた

第20章 悪魔の騎馬軍団のヨーロッパ遠征
大ハーン、オゴデイの「パクス・モンゴリカ」/正教会ルーシ諸国を蹂躙したバトゥのモンゴル軍/突然消滅した西欧キリスト教世界への脅威/神聖ローマ皇帝フリードリヒ二世とローマ教皇の確執

第21章 モンゴル軍のバグダード略奪
カリフが惨殺され灰燼に帰したバグダード/後継者争いのモンゴル内紛/イスラム世界征服の大遠征軍/エジプト侵攻でマムルーク軍に敗れたモンゴル軍

第22章 フビライ・ハーンと中華統一
モンゴル帝国全土の大ハーンとなったフビライ/南宋を征服し中華全土を統一/二度の日本侵略遠征の失敗/モンゴル帝国大ハーンと中華帝国元朝の初代皇帝

第23章 モンゴルを訪れた西欧人たち
ヨーロッパに衝撃を与えたマルコ・ポーロの『東方見聞録』/モンゴル帝国に派遣された教皇使節プラノ・カルピニ/モンゴルのキリスト教布教に失敗した修道士ルブルック/ポーロ一家の一攫千金の大冒険

第24章 破壊王ティムール
ステップから出現した「イスラムの剣」/チンギス・ハーンのような革新的な戦争術/チンギス・ハーンの帝国の再統一を目指すティムール/マムルーク朝スルタンとオスマン帝国に勝利したティムール軍/ティムール最後の大遠征、中華征服の野望

エピローグ 遊牧民征服者の事蹟と後世への遺産
三人の傑出した征服者/グローバル経済はモンゴルの遺産

著者紹介

ケネス・W・ハール(Kenneth W. Harl)
ニューオーリンズ、テュレーン大学名誉教授。専攻は古代史およびビザンティン史。特に、ステップ地帯の文明、ローマ史、貨幣学の世界的権威であり、ギリシャ、ローマ、ビザンティン、ヴァイキング文化に関する著作多数あり。本書は交易に関して著された著者初の総括的歴史叙述。

訳者紹介

水野克彦(みずの・かつひこ)
1957年生まれ、東京都出身。東京大学文学部西洋史学専修課程卒業。パナソニック株式会社退職後、翻訳の仕事に。訳書にダニエル・ステルター『コロノミクス』、(共訳、アチーブメント出版)、W・クレオン・スコウセン『裸の共産主義者』(経営科学出版)など。
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