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誰とも勝敗優劣強弱を競わない。比較する対象があるとすれば「昨日の自分」だけ。

天下無敵をめざす生き方
内田樹 著
天下無敵をめざす生き方

本書はこの数年間に内田樹氏が執筆した武道・修行・身体論を一冊に収めたものです。

昨年刊行の『どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』では、人口減少と高齢化が進む前代未聞の状況下において、親や教師のこれまでの成功体験は役に立たないのだから、大人は子供たちに対して「好きなことをやりなさい」と言うのが一番いい、と内田氏は語ります。

「自分が生きたいように生きればいい。(中略)そして、周りにいる友だちがやりたいことをすることを支援する。そうすることによって君たちの世代全体の能力を高める」。

今回の新刊は、前著から一歩踏み込み、著者の人生経験に基づいた提言がなされます。それが「天下無敵をめざす生き方」です。

一見、誇大妄想的、もしくは中二病的な文言だと受け取られるかもしれません。しかし、この絶対に到達できない「無限消失点」のような目標をめざし、淡々と稽古を重ねるという姿勢は、内田樹氏が追い求めてきた思想の根底に位置する重要な概念でもあるのです。

そして、「誰とも勝敗優劣強弱を競わない。比較する対象があるとすれば『昨日の自分』だけ」という生き方は、武道修行者だけのものではありません。「どうしたらいいかわからない時代」だからこそ、社会の状況に惑わされることなく、自分の信じる道を究めていく生き方は、万人にとって魅力的なものでしょう。

困難な時代を生きる子供たちにはもちろん、身の処し方に迷う大人の読者にとっても切実に役立つ一冊です。是非ご高覧ください。

(担当/渡邉)

内容紹介

誰とも勝敗優劣強弱を競わない。
比較する対象があるとすれば「昨日の自分」だけ。

中高生のための武道・修行・身体論

「天下無敵」という無限に遠い目標をめざす旅程においては、
修行者は誰も「五十歩百歩」です。
無限の旅程の中で、
自分が他の修行者より何キロ先まで行ったとか、
単位時間内にどれだけ走破したとか、
そんな相対的な優劣を競うことには何の意味もありません。

本文より

武道では勝敗強弱巧拙遅速を競うということをしません。それが「居着き」を生み出すからです。居着きは武道の最大の禁忌です。居着いたら終わりです。居着きとは、具体的には足裏が地面に貼りついて身動きできない状態を指す言葉ですけれども、もう少し広義にとれば、行動の選択肢が限定されている状態、同一の動作を反復することもそうです。

他者との相対的優劣を競わないのは、それが人を居着かせるからです。勝負を争う場合、人は負けると「負けに居着き」ます。屈辱感や敗北感にいつまでも囚われて、次のフェーズに進むことができない。あるいは「次は勝つ」という限定的な目標に居着いてしまう。

逆に、勝てば勝ったで、「勝ちに居着く」ということが起きます。ある意味では「勝ちに居着く」ことの方が、「負けに居着く」ことよりも危険かも知れません。勝ったという成功体験に居着いてしまうからです。人は一度成功すると、その成功体験を手放すことに強い心理的抵抗を覚えます。同じ成功体験を繰り返そうとする。でも、修行とは「居着かないこと」です。「勝ちに居着く」者は「負けに居着く」者と同じく、連続的な自己刷新機会を放棄することで修行から脱落した者なのです。

目次

まえがき
武道的思考
(修行は競争ではない/武道の変質の歴史/道の場――道場/武道はストレスフリーである/畏怖と同調にむかう道)
凱風の思想
正中線
武道的身体運用の基軸
天下無敵
体軸と外部の力
身体の豊かな可能性
後手に回る
残心について
修行の半世紀
呼吸法について
円筒形の身体
『武道的思考』韓国語版序文
私の原点
あとがき

著者紹介

内田樹(うちだ・たつる)
1950年、東京都生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。著書に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『他者と死者』、『先生はえらい』、『私家版・ユダヤ文化論』(小林秀雄賞)、『日本辺境論』(新書大賞)、『前-哲学的 初期論文集』、『どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』など多数。伊丹十三賞受賞。
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