草思社

話題の本

このエントリーをはてなブックマークに追加

サプリメントについての知識は、健康に生きるための「ライフスキル」です。

一般教養としてのサプリメント学
杉浦克己 著

 この本はスポーツ栄養学を専門とする研究者が、サプリメント全体について信頼できる研究成果・情報源にもとづいてわかりやすくまとめた本です。著者は現在、立教大学スポーツウエルネス学部の特任教授として教鞭をとっていますが、以前は明治製菓(現・明治)でアスリート向けのサプリメントの開発や栄養指導、マーケティングなどに従事していた経歴があり、製造・販売する側の考え方についても深い知見を有しています。
 本書では、そもそもサプリメントとはなんなのか、という基本的な定義から説き起こし、実際に摂取するうえで押さえておきたい基本情報を主要なジャンルごと(アスリートのためのサプリ、生活習慣病のためのサプリ、アンチエイジングのためのサプリ、ダイエットのためのサプリ……など)に紹介しています。またサプリメントについて考えるうえで避けては通れないメーカーの販売戦略(マーケティング)や、フードファディズムの問題についても、一章を割いて論じています。
 SNS時代になって、サプリメントについてはとかく極端な主張が目につきやすくなっていますが、本書は極論を排して、栄養学の基本的な知見を前提にその効能と限界を説いています。今後起こることが予想されている世界的な食糧不足に備えて、たとえばビル・ゲイツなどは新たにテクノロジーを駆使した食品を開発しようとしていますが、そうしたいわゆるフードテック商品の是非を考えるための基本的な視点も、この本を読めば得られるのではないかと思います。
 「必要以上にサプリメントを怖がらず、かといって過信もせず、サプリメントといいお付き合いができるようなヒントにしてもらえれば幸甚です」と著者は本書の「はじめに」で述べています。あれがいい、これはダメと……日々、あふれる健康情報にまどわされながら生きている私たちに、俯瞰した視点からサプリメントに関するリテラシーを授けてくれる一冊といえそうです。

(担当/碇)

目次

第1章 サプリメントって何?
第2章 サプリメントの歴史
第3章 サプリメント理解のための栄養学
第4章 危ないサプリメント
第5章 サプリメントのマーケティング
第6章 スポーツサプリメント
第7章 ダイエットとサプリメント
第8章 生活習慣病とサプリメント
第9章 アンチエイジングとサプリメント
第10章 フードファディズムとメディアリテラシー
第11章 サプリメント批判に答える

著者紹介

杉浦克己(すぎうら・かつみ)
1957年、東京都出身。東京大学大学院博士課程(身体運動科学)修了、博士(学術)。現在、立教大学スポーツウエルネス学部特別専任教授。専門はスポーツ栄養学。静岡大学理学部、同大学院で生物学を専攻し、1985年に明治製菓に入社。3年間の研究所勤務を経て、スポーツ食品ザバスの営業企画となる。1991年にアスリートの栄養サポートを行なう専門組織「ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ」を設立、所長となり、学術面を強化しながらプロテイン、エネルギードリンク、クレアチンなどのサプリメントの開発を行なった。その間、1998年にスポーツ栄養学を体系づけ博士号を取得。JOC、日本陸連、全柔連、JVAの栄養委員を歴任し、1998長野五輪アイスホッケー日本代表と2002日韓W杯サッカー日本代表の栄養担当として活動した。2008年から立教大学教授となり、2023年から特別専任教授。大学では体育会の栄養サポートだけでなく、子どもから高齢者までの食育および東日本大震災の復興支援にも活動の場を広げ、スポーツ栄養学を指導してきた。新座市健康づくり推進協議会副会長も務めている。著書は『スポーツ栄養学がわかる』(大修館書店)など多数。栄養に関する明確な解説には定評があり、YouTuberとしても活動している。
杉浦克己教授のリアルスポーツ栄養学 - YouTube
この本を購入する