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スパイダーマン、アイアンマン、ハルク、ドクター・ストレンジ、ブラックパンサー……
世界中で人気のスーパーヒーローを数多く創造したクリエイターの人生を描いた傑作評伝!

本書は、昨年11月に惜しまれつつ世を去った稀代のクリエイター、スタン・リーの評伝(原書“Stan Lee: The Man behind Marvel”、2017年刊)です。コミックというメディアの社会的地位を向上させ、《マーベル》を世界的なブランドに押し上げたアメコミ界のレジェンドの歩みが、文化史を専門とする著者の手によって生き生きと描かれています。
スタン・リーは自身の半生について2002年に刊行された自伝“Excelsior! The Amazing Life of Stan Lee”(未邦訳)の中で回顧していますが、本書は同書刊行以降のスタン・リーのジャンルを股にかけた大活躍をフォローするだけでなく、彼のキャリアに付きまとった経営陣や共同執筆者との確執、不透明なビジネス環境のもとで働き続けることへの葛藤などについても、さまざまな資料を使ってバランスよく記述しています。
スパイダーマン、アイアンマン、ファンタスティック・フォー、X-MEN、マイティ・ソー、ハルク、ドクター・ストレンジ……。スタン・リーが世に送り出したヒーローは枚挙にいとまがありません。その誰もが心の中に弱さを抱え、自身の感情と向き合うことでヒーローとして成長していきます。スタン・リーが特に愛着を持っていたスパイダーマンにもっとも典型的なように、ごく普通の人間と同じような悩みを抱えながら戦うことで、ヒーローたちは読者にとってリアルな存在になりえたのです。この点にこそスタン・リーの独創性があったと著者は指摘しています。その物語から導かれるのは、「スーパーヒーローが君と同じような人間ならば、君もスーパーヒーローになれるはずだ」という力強いメッセージなのです。
締切に追われながらキャラクターを創り、ストーリーを書くだけではなく、アートワークのチェック、コミックの編集、さらにはスタッフのマネジメント(時にはリストラを言い渡す役割)までこなしていたスタン・リーもまた、ままならぬ現実の中で悩みながら戦い続けたごく普通の人間でした。だからこそ彼の人生行路は、彼が生み出したヒーローたちと同じように多くの人に勇気に与えるのかもしれません。
(担当/碇)