話題の本
話題の本一覧
- 9月発売新刊のお知らせ
- アートからSNSまで、キュレーションはどのように世界を席巻したのか?
- イェール大学の超人気講座が待望の書籍化!
- 8月発売新刊のお知らせ
- フランスで6万部の大ヒット!自然を愛する全ての人に捧げる「反骨的庭づくり」のススメ!
- 球団はどこで稼ぎ、どう使っているのか?
- 身体心理学が明かす、最速で幸せになる方法!
- 儀式が先か、宗教が先か、部族が先か? 答えは「本能が先」である!
- 7月発売新刊のお知らせ
- 世界を揺さぶる独裁国家群のネットワーク!
草思社ブログをご覧ください
アートからSNSまで、キュレーションはどのように世界を席巻したのか?

Amazonでの買い物、マッチングアプリのスワイプ、SNSでの「イイね」……
あなたが普段何気なく行うこれらはすべて「キュレーション」だといえます。
もともとはアートの世界で主に使われていたこの言葉は、どのように生まれ、私たちの日常にまで浸透したのでしょうか。本書は、いまや世界中に広まった「キュレーション」の歴史と未来を読み解く一冊です。
・キュレーションが成立するまで
まず、キュレーターが誕生するまでの歴史を、かいつまんで見てみましょう。
言葉の語源は古代ローマにまで遡ります。当時の「クラートーレス(curatores)」は、公共事業を担う官僚を指していました。語源となったラテン語の「クラ(cura)」には「世話」という意味があり、本来は「世話をする者」を意味していたのです。
中世になると、この言葉はキリスト教会に取り込まれ、「教区司祭」を指すようになります。当時の役割は、「法(行政)」と「信仰(宗教)」の間に位置する二重の務めを果たしていました。この構造は、現代の大型美術機関におけるキュレーターの姿にも重なります。アートの価値を人々に提示して信じてもらう一方で、美術館という組織のなかで作品の貸与や購入といった現実的な務めをこなす必要があるからです。
近代になり、いわゆる博物館の学芸員的な存在の先駆けとして登場するのは、科学者のロバート・フックです。彼は王立協会の所蔵品を、定期的に実演する担当者でしたが、収蔵品を公開し、一般の人にプレゼンするという概念は、中世の従属的にふるまうキュレーターの在り方を現代的に大きく一歩踏み出していると言えます。そこから、18,19世紀と進むにつれて、いわゆる美術品を扱うキュレーションという今日の在り方が登場してくるのです。
そして、20世紀前半には、展示空間「ホワイトキューブ」の登場により「作品に新たな価値を付与する力」が求められるようになります。さらに1960〜70年代のコンセプチュアル・アートブームによって膨大な作品が生まれると、「作品を整理・解釈・仲介する存在」としての重要性が急増。こうして、時代の寵児たる「スター・キュレーター」たちが誕生しました。
・キュレーターが不在になってゆく
しかし、スター・キュレーターになれるのは一握りであり、やがてキュレーションのあり方は大きく変化していきます。
一つは、「キュレーターの置き換え」で、著名なアーティスト、有名人(マドンナ、ファレル・ウィリアムスのような)を「ゲスト・キュレーター」として起用することで、セレブの持つネームバリューやファン層の方が、専門的なキュレーターよりも直接的に観客と資金を引き寄せられるため、本職のキュレーターの影が薄くなっていきました。
もう一つは「キュレーターなきキュレーション」の台頭です。大企業は、自前の資金とディレクター陣だけで展示を行うようになり、また展覧会がテンプレート化することで、企業内で一般社員が作品を選定したり、さらにはデジタル空間(SNSやアルゴリズム)で消費者が自らキュレーションを行うようになっていったのです。そこで「専門職としてのキュレーター」は、現場や日常から段階的に排除されていきました。
・キュレーションは本当に要らないのか?
今やあまりに当たり前に「キュレーション」させられている私達にとって、もはや私たちはその概念自体を意識することすら少なくなっています。
しかし、キュレーションが辿ってきた歴史を振り返れば、「何かを選び取り、見せ方を工夫する」という行為には、物に新しい魅力や価値を与える大きな力があることに気づくはずです。AIがさまざまな作業を自動でこなす現代だからこそ、この「人間の手による選別と価値づけの力」を改めて見直すべき時が来ているのではないでしょうか。
(担当/吉田)
