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残酷で理不尽なこの世界を正しく自由に生き抜くための少年マンガ論

生きのびるための現代少年マンガ論
――『進撃の巨人』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』を読み解く
杉田俊介 著
生きのびるための現代少年マンガ論

なぜ、現代の少年マンガはこれほどまでに残酷で理不尽なのか。
それにもかかわらず、なぜ熱狂的に支持されているのか。

『進撃の巨人』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』の4つの大ヒット少年マンガについて、現代の社会的現実がどのようにストーリーに組み込まれているのか、その作品ごとに込められた意味を読み解きます。著者の杉田俊介氏は、『宮崎駿論』『ジョジョ論』『ドラえもん論』など、サブカルチャー作品を社会背景や思想と結びつけて読み解く評論を手がけてきた批評家です。

著者は、「少年少女たちは戦っている。/何に対してか。/生まれた時から何かを理不尽に奪われている、という運命に対して」と初めに述べています。現代の少年マンガには、現代の若者が現実に抱く逃れがたい運命や絶望感が深く関係していて、それ故に若者に大きな支持を得ているのではないでしょうか。だからこそ、作品において、どのように若者たちにとってのリアリティーが構造化されているかを見ていくことが重要なのです。

ここで、それぞれの作品ごとの批評的みどころのいくつかをご紹介します。

◇『進撃の巨人』では、歴史の偽造・隠ぺいがあったり記憶の混濁があったりと、常に世界の真実が入れ替わるような「ポストデモクラシー」的世界であり、しかしそのなかでより良い世界を希求していく物語であり、そこにデモクラシーの別の可能性が示されていたのではないか。

◇『鬼滅の刃』における、「自然の摂理」の考え方。昨年話題になった劇場版の猗窩座と炭治郎の戦いの最中に、「弱者には虫唾が走る 反吐が出る 淘汰されるのは自然の摂理に他ならない」という、ダーウィニズムを髣髴させるものがありますが、炭治郎は「お前の言ってることは全部間違ってる」と反論し、ケア論的な正義によって自然の摂理を意味づけようとしているように読めます。

◇『呪術廻戦』の人外魔境新宿決戦での宿儺と五条悟の戦いは、ある意味「マウント合戦」として見ることができる。そして、本作で本当の「悪」たりえる可能性を持っていたのは、宿儺でも羂索でもなかったのではないか、という刺激的な説を展開。

◇『チェンソーマン』は、第二部の最終回が否定的な意見を多く呼びましたが、本作に残されていた可能性、ポストトゥルースに対抗する「破壊的変身」の可能性を、作品を精読することで細かく探求。

本書を読めば、現代少年マンガの重苦しさは必然的に背負ったものであって、そこにこの厳しさ極まる時代において、「自由に、正しく」生き抜くヒントが記されていることが分かるはずです。
作品のファンの方はもちろん、現代社会の問題について考えたい方にもぜひ一読いただきたい一冊です!

(担当/吉田)

著者紹介

杉田俊介(すぎた・しゅんすけ)
1975年生まれ。批評家。主な著作に『宮崎駿論』(NHKブックス)、『長渕剛論』(毎日新聞出版)、『非モテの品格』(集英社新書)、『ジョジョ論』(作品社)、『ドラえもん論』(Pヴァイン)、『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か』(集英社新書)、『橋川文三とその浪曼』(河出書房新社)、『神と革命の文芸批評』(法政大学出版局)、『男がつらい!』(ワニブックスPLUS新書)など。
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