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変革すべきは「社員の意識」ではない。「組織の文化」だ!

成長する組織のマインドセット
――イノベーションを生み出す組織文化のつくり方
メアリー・C・マーフィー 著 大場伸枝 訳 キャロル・ドゥエック まえがき(『マインドセット』著者)
成長する組織のマインドセット

◆組織文化の最重要論点にフォーカス。世界700万部『マインドセット』の組織版

 企業や組織の文化については近年、多くの側面から論じられてきました。しかし、組織の文化について、最も重要な論点とは何でしょうか。それは、「人は、特定の組織文化の下では、そうでなければやらないようなことをすることがあり、それが個人の能力開発や組織の業績を大きく左右する」ということではないでしょうか。
 組織文化により学習意欲が駆り立てられて能力が開花し、イノベーションを起こすこともあります。逆に、組織の文化次第では、不正に手を染めたり、同僚を欺いたり、ミスを隠蔽したりしやすくなったりします。もちろん、働く人たちがイノベーションを起こしやすい文化の方が、不正や隠蔽を起こしやすい文化よりも、望ましいでしょう。その違いはどこにあるか、どうすれば望ましい文化をつくれるのか? この論点こそが、組織のリーダーにとっても、社員にとっても、最も重要だと言えるのではないでしょうか。本書はまさにここにフォーカスした一冊です。
 本書は、世界700万部のベストセラーとなった能力開発のバイブル『マインドセット』の理論をベースとした実践的組織文化マネジメント論です。この分野の第一人者である著者は、組織のマインドセット文化には「成長志向の文化」と「才能至上主義の文化」があると言います。前者では協業・イノベーション・学習が起こりやすく、組織の業績は高く、後者では不正・隠蔽・離職が起こりやすく、業績が低くなることを、数多くの企業・組織の事例と緻密な科学的エビデンスで解説。さらには、どうすれば自分の組織を「成長志向の文化」に近づけられるのか、実践的なアドバイスも行います。

◆組織の文化はどのように会社の業績を左右するのか。文化は変えられるのか

 マインドセットの研究は、「個人の能力は生得的なもので変化しない」と信じていると、本当にその人の能力の成長が頭打ちになることを明らかにし、教育や能力開発の分野に大きな影響を与えました。本書の著者が行った組織のマインドセット文化の研究によっても、組織が社員の能力を変化しないものと捉え、上層部が有能だと考える社員だけを優遇する「才能至上主義の文化」に陥ることの弊害が明らかになっています。
 そのような文化の組織では、社員をふるいにかけるため、社員の業務成績ランキングを作成し、下位の者にペナルティを与えるといったことが行われます。すると、社員は自分の地位を守るために、業務を効率化する知恵や仕事上の重要な情報を、ライバルである同僚に教えないほうが得策だと考えるようになります。さらには、ペナルティを恐れてミスを隠蔽。新しい施策を思いついても、失敗のペナルティを恐れ、挑戦しない方がましだと考えます。これでは業務効率は悪化し、変化に適応するための情報の共有や試行錯誤も行われず、組織の業績は低下、心理的安全性の低い職場から社員が次々と離職していきます。著者はこのような才能至上主義の文化の特徴や弊害を、かつてそのせいで業績不振に陥ったマイクロソフト社やGE社などの事例と、心理学実験などの科学的エビデンスを示して解説していきます。
 では、組織文化を好ましい方向(成長志向の文化の方向)へ動かすには、成績ランキングをやめるだけでいいのでしょうか。もちろんそれも有効で、心理的安全性を高めますが、それだけでは不十分です。ではどうすればいいのか? 本書は、組織文化の変革のためにできることは、実際にはたくさんあることを示しています。しかも、それを実行できるのは経営トップ層だけではありません。現場のリーダーや従業員自身にも、できることがあるのです。
 苦境にあったマイクロソフト社は、マインドセット理論をもとに組織文化を改革し、業績を回復させました。本書にはそれ以外にも、石油大手のシェル社の組織文化改革に著者が手を貸し、死亡事故ゼロを実現した事例も紹介されています。これらのような大規模組織でさえも、組織文化の改革は可能であり、その効果は非常に大きいことがわかっています。
 会社を変えたいのなら、変革すべきは「社員の意識」ではありません。「組織の文化」こそ、変革すべきです。それをはじめるために、本書は必読の一冊です。

(担当/久保田)

目次

まえがき――組織がマインドセット文化を持つという発見 [キャロル・ドゥエック]
序章 「才能至上主義の文化」と「成長志向の文化」
第1部 マインドセットを正しく理解する
第1章 マインドセットはスペクトラムである
マインドセットは個人の生来の資質ではない
マインドセットはスペクトラムである
個人のマインドセットは文化に左右される
「才能至上主義の文化」と「成長志向の文化」

第2章 「組織のマインドセット」とは何か
マインドセットは個人だけの問題ではない
マインドセット文化の違いはどこに現れるか
マインドセット文化が自己強化されるサイクル
マインドセット文化が及ぼす効果を詳しく見る

第2部 成長志向のマインドセット文化を育むには
第3章 組織内競争をなくし協働を増やす
組織内で個人同士を競わせる制度
組織内競争が生み出す数々の弊害
協働は対外的競争力を高める
協力的な成長志向の文化をつくりだす方法とは

第4章 組織が変わればイノベーションが促される
成長志向の文化はイノベーションを促す
マインドセットは創造性にどう影響するか
安全管理のイノベーションを促したシェル

著者紹介

メアリー・C・マーフィー(Mary C. Murphy)
インディアナ大学心理・脳科学科の冠教授であり、スタンフォード大学行動科学高等研究センターダイバーシティ夏季研修を創設しディレクターを務める。また、社会行動科学を通じてより公平な学習・労働環境を構築すべく学校や企業と協働する研究・コンサルティング機関「エクイティ・アクセラレーター」の創業者兼CEOでもある。100本以上の論文を発表しており、2019年には米国政府が若手研究者に授与する最高峰の賞である「大統領若手研究者賞」を受賞した。また、アメリカ科学振興協会のフェローにも選出されている。テキサス州サンアントニオ出身で、テキサス大学オースティン校で学士号を取得後、クロード・スティールとキャロル・ドゥエックの指導のもと、2007年にスタンフォード大学で社会心理学の博士号を取得した。現在はインディアナ州ブルーミントンとカリフォルニア州パロアルトを行き来しながら生活している。

訳者紹介

大場伸枝(おおば・のぶえ)
翻訳者。津田塾大学卒業、筑波大学大学院修士課程修了。米系法律事務所、米系企業に勤務したのち独立。ビジネス全般、マーケティング等の翻訳を手がける。
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